『クローン・ウォーズ』シーズン3 あらすじ紹介と寸評:第1~11話(1 of 2)【アニメ】

アニメシリーズ
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〈総評〉

過去シーズンで展開したエピソードの前・後日譚が多く、物語の掘り下げが印象的なシーズン。

とくに『フォースの惑星』に始まる三部作はSW世界観の壮大さに触れることができる重要作品と言えるでしょう。シーズン前半部では分離主義勢力によるカミーノ総攻撃を描く『誇り高き兵士たち』、「邪悪な軍団」という印象で一刀両断されがちな分離主義陣営に属す人々の「顔」が描かれ、善悪は「見方の問題」に過ぎないという新三部作の風味をより強く味わえる『分離主義者の友』『平和を求めて』が出色。

【他シーズン】:劇場公開作品 シーズン1前半後半 シーズン2前半後半 シーズン3前半後半 シーズン4前半・後半

第1話:『トルーパーへの道』

【冒頭テーマ】:「兄弟の手にする武器は命の絆」

【あらすじ】:故郷カミーノで訓練に明け暮れるクローンたちは、戦闘教練の総仕上げ「シタデル・チャレンジ」にクリアすることで一人前のトルーパーと認められる。しかし落ちこぼれ集団「ドミノ分隊」の合格は絶望的で・・・。

【感想】:シーズン1『ルーキーたち』で多くが悲劇的な最期を遂げたドミノ分隊のかつての姿が描かれます。「自立心を大幅に制限されている」はずのクローンたちですが、ほとんどが有り余る個性を持ち互いをニックネームで呼び合っています。「個性」なるものは遺伝子情報が決めるのではなく集団生活によって否応なしに獲得するものということなのでしょうか。

本エピソードで活躍する分隊の面々はそれぞれの個性と向き合うことでチームとしての結束を身に付けて見事最終試験に合格します。しかし彼らを待っているのは『ルーキーたち』の惨劇・・・。兵として生きる男たちの絆の強さ、美しさ、そしてその運命の虚しさ、哀しさに思いを馳せさせる一作です。

また、本作が初登場となるクローン99の存在が出色。彼は先天的な障害を持って生まれたために兵士として扱われず「雑用係」としての日々を送っていたが、その思慮深さで悩める「ドミノ分隊」の面々に助言を与え、登場シーンは多くないながら強い印象を残します。

【時系列】:『内なる敵』>本作>『補給線をつなげ』

第2話:『誇り高き兵士たち』

【冒頭テーマ】:「戦場では兵士の力が、故郷では心が試される」

【あらすじ】:共和国軍の主戦力を壊滅させるべく、グリーヴァス将軍とアサージ・ヴェントレスはカミーノのクローン施設攻撃を敢行する。しかし「故郷」を守るため、すべてのクローンたちは激しい闘志を燃え上がらせるのだった・・・。

【感想】:こちらは『ルーキーたち』の後日譚であり、スターウォーズ史上「カミーノの戦い」と呼ばれる戦闘が展開。分離主義陣営の二大将軍グリーヴァスとアサージが初タッグを組み、クローン軍団潰滅を目指してそれぞれ宇宙軍・海軍を率いてカミーノに押し寄せます。ギミックで出色なのが〈グラップラー〉と呼ばれる水陸両用アサルトシップ。「巨大イカ」の見た目そのままに水中を泳ぎ、陸上を闊歩する恐るべき兵器であり、カミーノの首都に甚大な被害を与えて行きます。

しかし見所は何といっても一丸となって故郷防衛に燃えるクローンたちの団結。数々の修羅場を乗り越えて成長したドミノ分隊の生き残りファイヴズエコー、前線から駆け付けたコーディレックス、そしてクローン99。それぞれの矜持を胸に奮闘するトルーパーたちの活躍を前に、今回ばかりはジェダイのライトセーバーアクションも色褪せます。

【時系列】:『悪夢の暗殺者』>本作>『惑星封鎖を解き放て』

第3話:『補給線をつなげ』

【冒頭テーマ】:「意思のあるところに、道はある」

【あらすじ】チャム・シンドゥーラとの共闘成ったライロス戦線は分離主義陣営の猛攻により再び危機に陥る。風前の灯となった人々の命を救うためには急ぎ敵の封鎖線を突破し、補給物資を届ける必要があるのだが、補給の鍵を握る惑星トイダリアは厳正中立を主張し、共和国への協力を拒むのだった・・・。

【感想】:こちらもシーズン1『待ち伏せ』の前日譚。本エピソードをきっかけとして絶対中立を宣言していたトイダリアは共和国との同盟を考慮するに至り、衛星ルゴサでヨーダとの会合を持つに至るのです。メインテーマとなる「人道支援」と「戦争不介入」の間で揺れ動くトイダリア大王カトゥーンコの葛藤は、本場アメリカ人より日本人の方が感情移入しやすかったりするかもしれません。

【時系列】:『トルーパーへの道』>本作>『待ち伏せ(S1)』

第4話:『惑星封鎖を解き放て』

【冒頭テーマ】:「子供を奪われるのは希望の喪失」

【あらすじ】:通商連合は経済問題を理由に衛星パントラの封鎖に踏み切る。事態打開のためパントラ書記長パパノイダは代議員チューチーを通して元老院に訴えるが、その動きは遅々としたものだった。さらに追い打ちをかけるようにパパノイダの娘二人までが誘拐される。すべてはパントラ政府を揺さぶり、分離主義陣営に引き込むための謀略であることは明らかだが・・・。

【感想】:毎度やりたい放題を続けながら元老院に隠然たる勢力を持ち続ける通商連合が再び暗躍。代議員ロット・ドットは分離主義陣営への接近を「総督ガンレイの独断専行」とする姿勢を堅持し、組織としては飽くまでも共和国に忠誠を尽くすという二枚舌を使いこなす卑劣なスタンスを貫き通す卑劣な政治家として描かれ、これほど見え透いた謀略を行いながらも議会から排斥されないあたり、いかに通商連合の財力と影響力が凄まじいかが見て取れると言えるでしょう。

本エピソードの主人公格を務めるのはシーズン1「侵入者」で死亡したチーに代わってパントラの新書記長となったパパノイダ男爵。このキャラクターはもともと監督ジョージ・ルーカスのカメオ出演のために作られたキャラクターでしたが、このたび誘拐された娘を救出せんと映画『96時間』ばりの活躍を繰り広げるのでした。件の誘拐事件の実行犯の一人は「例のあの人」というファンサービスもニヤリとさせてくれる一作。

【時系列】:『誇り高き兵士たち』>本作>『邪悪なる計画』

第5話:『星を蝕むもの』

【冒頭テーマ】:「希望を持ち続ければ、腐敗にも打ち勝つ」

【あらすじ】:戦争に中立を貫いたことで交易が滞ってしまったマンダロアでは物資不足から腐敗が蔓延っていた。元老院代表として同地を訪問したパドメは盟友サティーンとともにその実態を追う。折しもマンダロアでは子供たちの集団食中毒が発生、その背後には意外な人物の裏切りが潜んでいた・・・。

【感想】:前シーズンで共和国の「侵略」を跳ね除け厳正中立を維持したマンダロアの窮状が描かれます。悪意ある無視に晒されたマンダロアは交易関係が途絶し、極端な物資不足から様々な汚職や腐敗が横行。政府機関も冗長な議論と内輪揉めに終始するばかりという体たらくを晒しています。「血を流す戦争」の回避に成功したことで到来した「血を流さない戦争」に奮闘するサティーンの奮闘がテーマとなります。

【時系列】:『危険な追跡』>本作>『王立アカデミー』

第6話:『王立アカデミー』

【冒頭テーマ】:「法を強いる者は法に従わねばならない」

【あらすじ】:政治腐敗に喘ぐ祖国を担う若き人材を育てるため、サティーン女公爵は高潔で知られるジェダイ評議会に王立アカデミーの講師派遣を要請。若き生徒たちの一部は「腐敗に声を挙げるべき」とする講師アソーカの訴えに共鳴し・・・。

【感想】:共和国の腐敗に踊らされているジェダイが腐敗を糾弾する光景は非常な皮肉を感じるものの、アソーカの訴えに共鳴したサティーンの甥コーキーらの活躍によってマンダロア政府に潜む「寄生虫」の正体が暴かれることになります。これによってサティーン女公爵は名実ともにマンダロアの君主としてその統治にあたることになるのですが・・・。

【時系列】:『星を蝕むもの』>本作>『悪夢の暗殺者』

第7話:『悪夢の暗殺者』

【冒頭テーマ】:「未来への道は無数にある 考えて選べ」

【あらすじ】:日増しにフォースとの繋がりを強めるアソーカはジェダイの見る予知夢ヴィジョンを垣間見る。そこでは死んだはずの賞金稼ぎによる恐ろしい暗殺の光景が繰り広げられていた・・・。

【感想】:シーズン2最終話で死んだと思われたオーラ・シングが再登場。本エピソードでアソーカが垣間見る「フォース=ヴィジョン」は後にアナキン、さらに後にルークも悩ませることになるジェダイ独自の厄介スキルです。ジェダイはフォースを通して未来を垣間見ることができる。しかしそれは確定したものか変更可能なものか誰にも分からない・・・。という実にありがた迷惑な能力をめぐる物語。

【時系列】:『王立アカデミー』>本作『誇り高き兵士たち』

第8話:『邪悪なる計画』

【冒頭テーマ】:「出来の悪いプランは必ず失敗を招く」

【あらすじ】:重要なパーティに必要な買い出しを任された3POR2に賞金稼ぎの魔の手が迫る・・・。

【感想】:シーズン1『人質』の前日譚となるエピソード。容易く元老院議事堂を占拠したと思しきベインですが、やはり裏では相当の苦労をして重要機密を盗み出していたことがわかります。全体にコミカル回ですが、スターウォーズきっての名コンビ3POとR2の「コンビネタ」が愉しいエピソードです。

【時系列】:『惑星封鎖を解き放て』>本作『人質(S1)』

第9話『ズィロを追え!』

【冒頭テーマ】:「愛の形と大きさは様々だ」

【あらすじ】:ベインらの活躍によってコルサントの刑務所から脱出したズィロはハット族の本拠地ナル・ハッタに護送される。かつての恋人を利用して自由を手に入れようとするズィロだが、ハット族の浮沈にかかわる情報を握る彼はジェダイや賞金稼ぎから追われることになるのだった・・・。

【感想】:こちらは『人質』の後日譚。重要情報をネタに上手く立ち回ろうとするズィロをめぐる追跡劇となりますが、EP3に名前だけが登場したジェダイのクインラン・ヴォスが初登場。レジェンズ、カノンともに登場の人気キャラクターであり、ともにジェダイの異端者として印象を残しています。破天荒なヴォスとコンビを組んだがために振り回される生真面目なオビ=ワンが愉しいですが、後のシリーズ『オビ=ワン・ケノービ』の展開を知ると感慨深いものありと言わざるを得ません。

オールドファンに驚きなのは本エピソードのカギを握るズィロの元恋人として登場するサイ・スヌートルズでしょう。EP6序盤でジャバ宮殿で歌って踊っていた彼女の驚きの過去が明らかになる回でもあります。

【時系列】:『人質(S1)』>本作『分離主義者の友』

第10話:『分離主義者の友』

【冒頭テーマ】:「恐怖はひとの心を動かす」

【あらすじ】:元老院は戦争継続に向けて加熱し、財政破綻のリスクもものともせず大規模な兵力増強策である「クローン増産計画」に傾いてゆく。どうにか外交的解決の糸口を見つけたいパドメはかつての友であり今では分離主義勢力に与する議員とコンタクトを取るのだが・・・。

【感想】:本エピソードに始まる二作品は、シーズン2『議員暗殺』の前日譚となります。当該エピソードでえらくあっさり語られた「クローン増産計画凍結」の裏にはこのような苦闘があったのです。

パドメの先達にして善き友でありながら、今では分離主義陣営の議員として活動するミーナ・ボンテリが登場。共和国vs分離主義勢力の図式は『機動戦士ガンダム』の連邦軍vsジオン軍の図式とよく似ているでしょう。分離主義陣営またはジオン公国はトップが「悪者」なのは間違いありませんが、共和国または地球連邦からの独立を望む多くの人々には相応の理由やビジョンがあるのもまた確かです。映画作品ではまったく触れられなかった分離主義勢力に属す人々の「顔」を描く重要作品。

【時系列】:『ズィロを追え!』>本作『平和を求めて』

第11話:『平和を求めて』

【冒頭テーマ】:「真実は高まる恐怖を打ち負かす」

【あらすじ】:パドメの平和交渉は水泡に帰した。予想外の奇襲攻撃によって怒りと恐怖に駆られた元老院は戦争継続とクローン増産をほぼ可決せんとしていた。それを覆し得るのは「共和国の良心」ベイル・オーガナによる説得だけなのだが・・・。

【感想】:「増産計画」に反対の議員たちはドゥークーらの差し金によってことごとく「暴漢」に襲われ、それに怯えて反対の声を挙げようとしない。「そもそもなんで議員ともあろう者が夜道を単独で歩いてるんだ?」「護衛仕事しろ!」などあれこれ突っ込めそうな展開ですが、本エピソードを観ていて思い起こすのは戦前・戦中にかけての軍部の暴力に怯える日本の国会ではないでしょうか。

青臭い理想論を承知で言うなら、仮にも自ら望んで就いた職務であるにもかかわらず彼らの頭には自らの命を惜しむ思いしかないのは嘆かわしい。平和な場所で暴力に怯える人々のせいで多くの命と生活が危険にさらされることになっているのです。結末に関して、たかが一人の議員演説によって国全体の情勢をひっくり返し得るのかどうかは疑問ですが、そこは寓話として観るべしと言えるでしょう。

そういえば本エピソードはパルパティーンの「オフショット」が見える貴重な回でもあります。パルパティーン=シディアスというのは大半の観客には自明でも物語上は伏せられていますが、終幕において珍しくも彼の不穏・邪悪な面がはっきりと描写されています。

【時系列】:『分離主義者の友』>本作『議員暗殺(S1)』

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