本作は2003年から2004年にかけて製作されたSWアニメシリーズです。クローン戦争を扱ったアニメ作品と言えば圧倒的に『クローン・ウォーズ』シリーズを想起する方が多数派でしょうが、世界観充実への貢献度が凄まじいとはいえ7シーズンにも及ぶあまりに長大な同シリーズよりも、遥かに短い話数で完結する本シリーズの方がよりコンパクトに、それでも余すことなくSW世界におけるクローン戦争の様相と、そこで活躍したキャラクターたちの魅力を味わうことができます。
時代背景としてはなんとEP2直後からEP3直前までという2作品間を完全に繋ぐ内容となっており、アサージ・ヴェントレスや賞金稼ぎダージなどといった印象的な新キャラの登場はあるものの、既存の登場人物たちの掘り下げに重点が置かれており、当然ながら本作以降に制作された『クローン・ウォーズ』に登場して以来SWを代表するキャラクターにまで登りつめたアソーカ・タノは出てきません。
また迫力ある3DCG描写が魅力的な『クローン・ウォーズ』シリーズとは異なり、本シリーズは伝統的な2Dアニメ描写で構成されていますが、それでも大胆にテンポよく進むアクションは決して3DCGにも全く引けを取らない仕上がりとなっています。
当然ながら『クローン・ウォーズ』と大きく異なる物語となる本シリーズは「レジェンズ」として分類され、現行のSWユニバースでは「なかったこと」となっていますが、それでも一見の価値の大いにある名シリーズと言えるでしょう。
Volume.one〈新たなる脅威たち〉
「Volume.One」と区分される本シリーズは20章のエピソードで構成されていますが、その1章あたりの時間はなんと数分という短さです。しかし中身の充実ぶりは大変なもので、オビ=ワンやアナキンはもちろん、ヨーダ、メイス、キット、ルミナ―ラ&バリスなどといった有名キャラたちの迫力ある活躍ぶりが短時間ながら遺憾なく描かれ、『クローン・ウォーズ』と違って無個性さが際立つクローンたちは、それだけにかえって短い登場時間に冷徹な戦争のプロとしての凄みを印象付けます。
ジェダイたちの活躍が描かれる一方、分離主義者の頭目として彼らを悩ますドゥークー伯爵は新たなる弟子を迎え入れます。『クローン・ウォーズ』でもお馴染みのアサージ・ヴェントレスはここでもドゥークーお抱えの暗殺者として活躍し、物語終盤にアナキンと本作随一の見せ場となるライトセーバー・デュエルを繰り広げます。その舞台はなんとあのヤヴィン第四衛星。古代シスたちが築いた遺跡群を所狭しと戦い、激情とともに強敵を追い詰めて行くアナキンの暗黒面への傾倒ぶりは観る者の心を激しく揺さぶります。
本作のみに登場するキャラとしては、ダージが最も謎いた恐ろしい印象を残します。オビ=ワンが指揮官を務める惑星ムウ二リンストの戦いに突如現れた彼は、ジェンダイと呼ばれる超長命な種族でなんと当時2000歳を越えるという男です。その凄まじい戦闘力と並外れた再生能力でクローンたちをなぎ倒し、オビ=ワンすらも圧倒して行きます。
そして映画本編にも登場するグリーヴァス将軍。映画や『クローン・ウォーズ』では不利になるやただちに逃げようとする卑劣な男として描かれる彼ですが、本作では恐るべき強敵として描かれ、複数のジェダイやクローンを相手に一歩も引けを取らない猛将として強い印象を残すのでした。
Volume.Two〈アナキンの試練〉
シリーズ後半を受け持つVolume.TwoではEP3へ至るまでの戦乱の推移が描かれ、そのクライマックスを飾るのはEP3冒頭を飾るコルサントの戦いの壮大なバトルシーンです。分離主義者の大艦隊による大攻勢を受けたヨーダらは、首都防衛のためにあらん限りの力で敵を迎え撃ちますが、それらは単なる陽動に過ぎませんでした。
彼らの狙いはなんと最高議長パルパティーンの誘拐。多くのジェダイたちが首都防衛に向かった隙をついてグリーヴァス将軍率いる部隊がその身辺に迫ります。彼を守るのはかつてグリーヴァスと戦いその恐ろしさを身をもって知っているジェダイ・マスターのシャアク・ティ。彼女と数人のジェダイたちは最高議長の身柄を守りつつコルサントの錯綜した街並みを駆け抜け、グリーヴァスとその護衛マグナガードたちと激しい戦いを繰り広げて行きます。
しかし物語上もっとも重要なのはアナキンにもたらされる試練でしょう。偵察任務のため辺境惑星ノヴァンに赴いたオビ=ワンとアナキンは、そこで老人と女子供しか残されていない荒れ果てた村にたどり着きます。戦士である男たちはみな突然惑星を覆った災いの謎を解くため旅立ったが誰一人戻ってこなかった。彼らを救い出せるのは「幽霊の手」(義手)を持つアナキンだけであるという長老の言葉に押し出される形で、彼は単身ノヴァンの奥地へと乗り込むことになるのですが、そこで分離主義者たちの人体実験施設を発見することとなります。
それらのプロットのなかで印象的なのはアナキンがEP5でのルークのように、謎めいた洞窟でヴィジョンを垣間見るシーンです。有り余る力によって一度は英雄となりながら、やがて愛する者のためにその力を暴走させ周囲の人々はおろか愛する者自身をも傷つけ絶望に悶える勇者の姿。果たしてそれが何を意味するのか、観客だけには明らかな謎を胸にしながらもアナキンは分離主義者たちの恐ろしい人体実験施設の破壊と囚われの男たちの救出へと向かうのでした。
大胆でテンポの良い展開は前シーズンとまったく変わらず、とくにコルサントの街を舞台にしてグリーヴァスと戦いつつ逃げ回るシャアク・ティらの活躍ぶりは、目まぐるしい場面転換とアップテンポのBGMが相俟って作品随一の見どころとなっています。アナキンの運命をめぐる展開も短いながら不気味な余韻を残し、短いながらも軽快なアクションと重厚な演出の両立に成功している優れた名作です。
コメント