〈総評〉
ダース・モール復活!が最大の見どころとはいえ、泥沼の戦争をめぐって浮かび上がる人々の思惑が不穏な緊迫感を盛り上げて行くシーズン半ば。
前半ではアンバラ攻略をめぐって腐敗将軍クレルとレックスらトルーパーの対立が本格的ミリタリーアクションで多くのファンを魅了し、最高議長誘拐を阻止するため水面下で進むジェダイの秘密作戦を前にアナキンのジェダイ不審は決定的なものになろうとして行きます・・・。
【他シーズン】:劇場公開作品 シーズン1前半・後半 シーズン2前半・後半 シーズン3前半・後半 シーズン4前半・後半
第1話:『海洋惑星の激戦』
【冒頭テーマ】:「運命の呼び声に、選ばれし者は逆らえない」
【あらすじ】:海洋惑星モン・カラで内乱が発生。巧みな調停者であった国王が暗殺されたことで同地を二分する種族モン・カラマリとクオレンの緊張関係がピークに達し、分離主義勢力の扇動によって一挙に軍事衝突へと発展したのだ。次期国王は故郷の悲劇を終わらせようとするのだが・・・。
【感想】:舞台となる惑星モン・カラを故地とするモン・カラマリは反乱同盟軍の同胞としてSWに古くから登場し、『ジェダイの帰還』で艦隊司令官を務めたアクバー提督が最も有名なキャラクターでしょう。本作の主人公はクローンでもジェダイでもなく、内乱と侵略の危機に揺れる故郷防衛に奮闘する若き日のアクバーの奮闘と、彼が戴く新王リー=チャーの成長なのです。
ドゥークーに遣わされた工作員タムソンはクオレンの指導者ノーソア・ライに取り行ってモン・カラ内乱を演出し、その機に乗じて分離主義勢力による支配を根付かせることを目論みます。しかしそれを防ぐべく派遣されたクローン軍団とジェダイたちに頼り切ることもまた、アクバーの本意ではありません。真に自立した国家として故郷を存続させるべく、未だ若く未熟ゆえに熱意はありながらも明確なビジョンも断固たる決意も持てぬ新王を叱咤激励しつつ、その「忠臣」として戦いを潜り抜けて行くのでした。
【時系列】:『囚われのパダワン PART2』>本作>『グンガン参戦』
第2話:『グンガン参戦』
【冒頭テーマ】:「火を通して初めて強い剣は鍛えられる」
【あらすじ】:分離主義勢力とクオレンの連合軍の前に窮地に陥った同胞たちを救うべく、ナブーの水棲種族グンガンがその本領を発揮。しかし敵の根強い反撃を前にとうとうリー=チャーは絶体絶命の危機に陥る・・・。
【感想】:共和国とカラマリの窮地を知ったジェダイ評議会は共和国の同盟者であるグンガン族に救援を要請。ジャー・ジャー・ビンクス率いるグンガン部隊は水棲種族としての特性をフル活用して大活躍を繰り広げます。しかしタムソン率いる分離主義勢力もまた『誇り高き兵士たち』のカミーノ侵攻で活躍したトライデント級アサルトシップを中心とする増援を繰り出してしぶとい逆襲を展開。とうとうアクバーやジェダイたちまでが囚われの身となり、アソーカによって辛うじて救われた新王リー=チャーは頼る者もないまま一人強大な敵と立ち向かうこととなり、その真の力が試されようとしていました。
【時系列】:『海洋惑星の激闘』>本作>『囚われた王国』
第3話:『囚われた王国』
【冒頭テーマ】:「王冠は引き継ぐもの、王国は自ら獲得するもの」
【あらすじ】:すべての頼りを失ったリー=チャーは新王としての覚悟を固め、王国と捕虜たちの奪還を決意する。そしてその傍若無人ぶりを露にする分離主義勢力に対し、クオレンの指導者ノーソア・ライの心にも大きな揺らぎが生じていたのだった・・・。
【感想】:毎度のことながら他者を道具としてしか扱えない分離主義勢力の弱点が露呈するモン・カラ内乱もラストスパート。タムソンによる同盟者クオレンへの傲慢な振る舞いとモン・カラ支配の本音が指導者層の離反を招き、自らを対等な同胞として語りかけるリー=チャーの言葉を前に、頑なだったノーソア・ライの心はついに大きな変化を見せるのでした。SW永遠のテーマの一つ「他者との共生」を描く典型的エピソードと言えるでしょう。
【時系列】:『グンガン参戦』>本作>『危険な影武者』
第4話:『危険な影武者』
【冒頭テーマ】:「本当の姿は目で見ただけでは分からない」
【あらすじ】:惑星ナブーで人類とグンガンの間に亀裂が走る。故郷の危機に心痛めたアミダラとジャー・ジャーはナブーへ帰還し急進的なグンガンの指導者ボス・リオニーへの取り成しを試みるが失敗に終わってしまう。しかしあまりにも頑ななリオニーの態度に不審を覚えた二人は意外な真実にたどり着くのだった・・・
【感想】:人事不省に陥ったグンガンの指導者に代わり、瓜二つのジャー・ジャーが影武者を務めてトラブルの鎮定にかかるというドタバタ劇をベースとしたコミカルストーリーながら、なんと劇中でグリーヴァス将軍とアナキンがそれぞれ敵陣で捕縛されてしまうというシリアスな一大事も巻き起こる、正直少しリアクションに困る回。『シスの復讐』で初めて顔を合わせたことになっている関係上、ニアミスしつつ互いの顔を認識し得ないシチュエーションがニクイ。
ちなみにグンガンの大臣リッシュ・ルーが使用していた持ち主を意のままに操れる不思議なネックレスはレジェンズ作品群に登場するダークサイドの力を込めた古代シス卿のアミュレットを彷彿させる小道具でもあります。
【時系列】:『囚われた王国』>本作>『』
第5話:『アリーン支援作戦』
【冒頭テーマ】:「理解とは表面に隠れた真実を尊重することである」
【あらすじ】:震災に襲われた惑星アリーンへの人道支援に訪れた共和国軍に随行していたC-3POとR2-D2は風変わりな冒険に足を踏み入れることになる・・・
【感想】:本エピソードと続く次回エピソードは本シーズン中きっての変わり種となっており、一見大筋とは無関係かつ意味不明な寓話的作品となっています。
地震によって開いた「地下世界への扉」。そこに住まう恐ろしげな種族キンダロたち、そして更に内奥に住まう女王然とした不思議な生物オーフニと出会った両ドロイドは「惑星のバランス」を回復するよう要請されるのでした・・・。
一見コミカルな雰囲気と、どのような意味にも解釈できそうな寓話的物語という点で本エピソードは紛れもなく「神話」の香りを漂わせており、「現代の神話」の異名を持つスター・ウォーズに現代的風味づけを施す本シリーズにおいて思わぬ原点回帰的作品と言えるのではないでしょうか?
ちなみに本エピソードに登場する惑星アリーンの現住種族アリーナは『ファントム・メナス』にポッドレーサーの一人として登場したラッツ・タイレルが属す種族でもあり、映画『ミニオン』に登場するミニオンズを彷彿させる軽快かつコミカルな掛け合いも本エピソードの見どころとなっています。
【時系列】:『危険な影武者』>本作>『さまよえるドロイドたち』
第6話:『さまよえるドロイドたち』
【冒頭テーマ】:「真に愚かなのは愚者自身か? それとも愚者に従う者か?」
【あらすじ】:アリーンでの冒険を終えたC-3POとR2-D2は無事地表へ帰還するが、不思議な運命は再び二人を新たなる冒険へと駆り立てるのだった・・・。
【感想】:こちらは前エピソードの神話的雰囲気から打って変わって『ガリバー旅行記』を彷彿させる作品。「こびとの国」、「巨人の国」ではともに専制政治の欺瞞を暴き立て「民主主義をもたらした」両者ですが、その後に残ったのは混乱と破壊に過ぎませんでした・・・。
それは共和国の大義を押し戴いて銀河を混沌に陥れたクローン戦争の、そして言うまでもなく私たちが嫌というほど辿ってきた歴史の痛烈なカリカチュアであることは明白であり、そういう意味でも本エピソードはスター・ウォーズ版『ガリバー旅行記』と言っても過言ではないでしょう。
ちなみに冒頭テーマの原題は「Who’s the more foolish, the fool or the fool who follows him?」であり、『新たなる希望』でのオビ=ワンの台詞とまったく同じです。
【時系列】:『アリーン支援作戦』>本作>『アンバラの暗雲』
第7話:『アンバラの暗雲』
【冒頭テーマ】:「忠誠心の第一歩は信頼である」
【あらすじ】:重要な戦略拠点である惑星アンバラ攻略に燃える501大隊だったが、指揮官アナキンが最高議長直々の呼び出しによってコルサントへ去る。代わって部隊を指揮することとなったジェダイ将軍ポング・クレルは歴戦の猛者ではあったが、クローンへの侮蔑を隠そうともしない傲慢な人物だった・・・。
【感想】:クローン戦争のダイナミズムをこれでもかと味わえる大迫力コンバットアクション満載の快作ですが、無鉄砲ながらも尊敬に値するアナキンのもとを離れ理不尽な将に仕えることとなったクローン兵たちの苛立ちと葛藤の行方が最大の見どころと言えるでしょう。
義務と感情、上司と部下の板挟みとなるレックス、敢然と反抗的姿勢を貫くファイヴズやハードケースやジェシー、命令を守ることこそ自分たちの本分であると杓子定規な態度を固持するドグマ。彼らの反応は決して「遠い昔、はるか彼方の銀河で」活躍するクローン人間の兵士のものに留まらず、私たちが社会生活で味わう葛藤と反応と同じものなのです。
【時系列】:『さまよえるドロイドたち』>本作>『クレル将軍』
第8話:『クレル将軍』
【冒頭テーマ】:「無知の道は恐怖によって導かれる」
【あらすじ】:アンバラの速やかな制圧のため堅固な要塞基地を攻略する必要に迫られた501大隊だったが、クレル将軍が下した命令は自殺行為にも等しい無謀なものだった。もはや将軍への尊敬など微塵もない部下たちを前にレックスは部下たちの統制に努めるのだった・・・。
【感想】:クローンへの軽蔑と人命軽視を隠そうともしないクレルの傲慢に対しクローンたちの苛立ちはピークに達しようとしています。またしても発令された無謀すぎる作戦命令に対し、徐々に独断的傾向を強めて行く兵たちと将軍の関係はもはや修復不可能な域に達して行くのでした・・・。
痛快なアクションと暗澹たるストーリーが展開する「アンバラ編」ですが、もう一つの見どころとして狂暴な固有生物うごめくアンバラの不穏な環境とアンバラ軍が使用する非常に独特なデザインの兵器の数々が強く印象に残ります。
【時系列】:『アンバラの暗雲』>本作>『作戦への反抗』
第9話:『作戦への反抗』
【冒頭テーマ】:「無知な者は従い、賢明な者はそれを率いる」
【あらすじ】:要塞基地制圧を成し遂げた501大隊に更なる試練が降りかかる。そして再び下されたクレルによる人命軽視命令を前に、ついに兵たちの忍耐は限界を迎えようとしていた・・・。
【感想】:上官と部下との仲介に努めるレックスの努力も虚しく、クレルへの憤懣やるかたないファイヴズ、ハードケース、ジェシーらはとうとう独断で事を起こすに至ります。それは何よりも「命令に忠実に従う」ことをプログラミングされたはずのクローンたちが放つ「自我」の輝きであり、迫力あるアクションシーンとともに視聴者に大きなカタルシスをもたらすでしょう。しかしこれによってアンバラ編を通して醸成されたクレルと兵たちの間の不和はついに爆発。事態は避けられない悲劇に向かってひた走って行くのでした・・・。
【時系列】:『クレル将軍』>本作>『クレルの正体』
第10話:『クレルの正体』
【冒頭テーマ】:「自らの行動こそが、自らの遺産を決める」
【あらすじ】:多大な功績を挙げながら独断専行の罪で軍法会議にかけられることになったファイヴズたち。しかし憤懣やるかたないクレルは「反乱兵」たちの即時銃殺を命令するのだった・・・。
【感想】:クレルと501大隊の確執はついに最終局面を迎えます。自分たちへの理不尽な処遇と許し難い暴虐を前に兵たちはクレル排除に向けたクーデターを決行。自分たちは自ら考える能力を持つと叫ぶクローンたちは「戦争のためだけに創られた人工生命体」という呪われた出自を越えて「人間」としての尊厳を求めて戦うのでした。
そして不穏の中心人物であったクレルの真意もとうとう判明。冒頭テーマがいみじくも表すように両者は自らの行動によって自らの在り方を決定して行くのでした。
【時系列】:『作戦への反抗』>本作>『消えた植民者』
第11話:『消えた植民者』
【冒頭テーマ】:「行く先々に、己の過去が映し出される」
【あらすじ】:武器を持たぬ平和の惑星キロスは分離主義勢力の奸計によって占領されてしまう。救援に駆けつけた共和国軍だったがすでにキロスは無人の惑星と化していた。いったい住民たちはどこへ・・・?
【感想】:かつて奴隷貿易で一大帝国を築き上げたザイゲリアン奴隷帝国の末裔が登場。分離主義勢力と手を組むことで往年の帝国復活を目論む彼らを前に、かつて奴隷として辛酸をなめた経験を持つアナキンは半分暗黒面に堕ちているのではないかと思わせるほどの激しい怒りを見せます。
分離主義勢力の黒幕シス卿はそもそも「シス族の支配者」という意味であり、かつて多くの奴隷を従えることで繁栄した過去を持つという点でザイゲリアンと親和性が高かったのでしょう。この冷酷無比な両勢力の結託はジェダイにとって大きな試練となって立ちはだかるのでした。
【時系列】:『クレルの正体』>本作>『共和国の奴隷』
参考資料
本記事でご紹介した『クローン・ウォーズ』シーズン4のDVDまたはBlu-rayは各種ECサイトで購入できますが、スター・ウォーズのほぼ全作品を網羅したDisney+でのご視聴がもっとも効率的かつ安価です。
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