『スター・ウォーズ ビジョナリーズ 新たなる伝説』〈失われし夢たち〉【レジェンズコミック】

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本書で展開する物語に対して、本編との整合性を論ずるのは無益でしょう。なぜなら本書に収められた11の物語は、いずれもEP3制作時に生み出された膨大なコンセプトアートの数々から生み出されたものだからです。多くの美しく壮大なデザインに彩られた映画本編が産み落とされるまでには、日の目を見ることなく消えていった更に多くのコンセプトデザインがあることは容易に想像できるでしょう。

本書は、そんな人知れず葬り去られた傑作たちに再び生命を吹き込むかのような、あり得たかもしれないもう一つの物語集なのです。しかしそれらは決して横道に反れた邪道を意味してはいません。これらSWを構成する無限のイマジネーションの源から零れ落ちた作品たちの輝きは、私たちが心に抱くSWへの憧れを新たにさせ、物語への理解を従来とは違った角度から補強してくれる働きを持っているのです。

『オールド・ウーンズ~古傷』

帝政樹立から3年の月日が流れたある日の物語。銀河中に激震をもたらした大異変も、辺境惑星タトゥイーンの水分農家に与えた影響など微々たるものだったでしょう。この日も農夫オーウェン・ラーズは幼い甥ルークを連れて沈みゆく夕日を眺めていました。いつもの日常がいつも通り終わるはずでした。しかし彼らの知る由もないところで、過去の亡霊と未来の守り手の戦いが繰り広げられようとしていました。

パルパティーンなどいない。

帝国もない。ジェダイもいない。

光もない。闇もない・・・

・・・ここにいるのは、おまえと俺だけだ!

それは戦う理由すらない戦い。宿命の鎖に繋がれた二人の戦士の因縁のみが存在する戦い。そして決して歴史にその名を残すこともない戦い。

『ナブーの画家』

全編、印象派の絵画を思わせる儚い筆致で描かれた物語。ナブーの人里離れたアトリエで「太陽と月」の画題に憑りつかれた画家を主人公としています。ある日偶然に遭遇した元老院議員パドメ・アミダラの姿を見た日から彼女と双子の子供たちのヴィジョンに憑りつかれます。長い月日をかけてそのヴィジョンを画布に叩きつけた画家は悟るのです。これは「彼女を救え」と言う意味なのだと。

勇気ある行動によって画家は見事暗殺者の魔の手からパドメを救います。その後再び彼が憑りつかれたヴィジョンは、歴史上誰もが忘れることのできない「あの星」の姿だったのでした。彼が垣間見たヴィジョンはジェダイがフォースを通して垣間見るものと同じものだったのでしょうか? そして彼は「あの星」をも救おうとしたのでしょうか? だとしたら彼の運命は・・・。

『ワット・タンバーとアルビノ・サイクロプスの聖なる眼の探求』

こちらは一転サイケデリックなイメージが全編を支配する不可思議な物語。本編ではもはや「名もなき」というに等しい端役である分離主義勢力幹部の一人ワット・タンバーを主人公とするこの物語のあらすじや意味を詮索するのは無益かもしれません。読み手はひたすらそのイメージのなかに没入し、各々が感じるままに物語を解釈することを求められることでしょう。

『シシシス』

この不可思議なタイトルは「シス」とエジプト神話の神「イシス」を組み合わせた造語ということです。物語の内容もまた神話を思わせる不可思議かつ幻想的、そして恐ろしい儀式を描いたものであり、「ダース・シディアスの真の力」とでも形容すべき果てしない暗黒面の迸りが強い印象を残します。

本編では「選ばれし者」によって敗北を喫したシディアスですが、この物語ではそれすら絶大な力で葬り去り、まさに運命に対してすら完全なる勝利を勝ち取ったような彼の姿にSWのバッドエンドを読む思いにさせられる一作。

『エントレンチド~塹壕』

本書でいくつか散見されるサイドストーリー色の強い作品。EP5のホスの戦いで絶望的な戦いを繰り広げる一人の反乱軍兵士のモノローグとともに物語は進んで行きます。未だ若く、本来ならば奔放に人生を謳歌していてもおかしくない青年は、度重なる戦いを潜り抜けたことで多くの葛藤や悲しみ、そして誇りを胸に、己の信念を貫くべく押し寄せる帝国兵たちを相手に懸命の奮闘を繰り広げるのでした。果たして彼を待ち受ける運命は? そして彼が命と引き換えにしてもメッセージを残そうとした愛する母とは・・・?

『フォース・プリーセプト 第4の戒律』

本書中もっとも美しく、もっとも謎めいた作品。ライトセーバーを構えた生物ともドロイドともつかない二人の人物が幻想的な空間を舞台に戦い、やがて合一に至るまでが描かれ、ひたすらその美麗な映像世界に浸り、味わうことだけを目的とするような作品です。SWをモチーフとした曼荼羅とも言えるような、心地よい陶酔感をもたらしてくれる逸品。

『プロトタイプ』

2Dアニメ『クローン大戦』に登場したダージが登場する物語。シスとマンダロアの戦争というセリフが登場することから映画本編の数百年前ほどの物語と思われますが詳細は不明。後にコミック『ダース・ベイダー』に登場するドクター・サイロを彷彿させるマッドサイエンティストと彼が作り出すサイボーグの数々が印象的な一作。

『帝国新兵募集!』

読んで字のごとく帝国軍の宣伝用ポスターをイメージしたポップなイラストの数々。

『ディープ・フォレスト~深淵の森』

こちらもサイドストーリーの趣きが強い作品。共和国と分離主義勢力の間で揺れるキャッシークはいかにして共和国陣営として戦争に参加する決意を固めるに至ったかが描かれます。

『広大なる銀河の撮影記録』

様々なコンセプトで描かれるSWの「もしも」の姿。それは戦火に燃えるマイギートー、それはオルデランから逃れた難民たちの姿、それは〈デス・スター〉の知られざる細部、それは遊び心ある建築物、それはまったく異なる姿の首都惑星、etc…バリエーション溢れる愉しき想像の数々。

『アイズ・オブ・レボリューション』~革命の眼

EP3屈指のインパクトを誇りながら詳細が語られることのなかった、グリーヴァス将軍の誕生にまつわるエピソード。かつて誇り高き戦士であったグリーヴァスは分離主義勢力の思惑に翻弄され、今に見るおぞましい戦闘狂へとつくり変えられて行きます。後のダース・ベイダーのプロトタイプとも呼べる彼の姿を通して、分離主義者と彼らを操るシスの利己的な恐ろしさを垣間見させる作品。

参考資料

本記事でご紹介した『スター・ウォーズ ビジョナリーズ 新たなる伝説』は各種ECサイトにてご購入いただけます。

また、物語の根幹を成すスター・ウォーズ作品に触れるにはほぼ全作品を網羅したDisney+でのご視聴がもっとも効率的です。

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