『DAWN OF THE JEDI:THE PRISONER OF BOGAN』【レジェンズコミック(未邦訳)】〈ジェダイ創世記#2〉

レジェンズコミック
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映画本編を遡ること約26,000年・・・。恐るべき侵略国家「無限帝国」の脅威を軸にジェダイ草創期の歴史を描く『DAWN OF THE JEDI』シリーズ第二弾。謎めいたフォース・ヴィジョンによって引き寄せられた三人の若きJed’aii(ジェダイの前進となる組織)と、邪悪な無限帝国によって作り上げられた暗黒面の戦士Xeshは惑星タイソンにて激闘を展開。若きJed’aiiたちの絆を前に辛くも敗れたXeshは捕虜となり、裁きの場に引き出されます。

しかし彼らがこの不可思議な闖入者の扱いを考えあぐねている間に、ダークサイドのエネルギーを糧とする無限帝国は比類なきフォースの惑星タイソンへの侵略計画を推し進めていたのでした・・・。

前作『FORCE STORM』≫本作≫次作『FORCE WAR』

あらすじ

闇は闇へ

Je’daiiのマスターたちは危険な暗黒面の徒であるXeshをタイソンの月Boganへの追放に処すことを決定します。それは彼らの間で長く続く、暗黒面へ傾き過ぎたJe’daiiに対する処遇と同じものでした。ライトサイドとダークサイドのバランスを重視するJe’daiiたちはどちらかへの傾倒が甚だしすぎると判断された場合、それぞれ光と闇に対応するタイソンの月AshlaまたはBoganへと流され、そこで自分が遠ざけすぎたフォースの側面について熟考することとされていたのでした。

が、彼を打倒した三人のJe’daiiはその決定に強い反発を露わにします。Je’daiiの教義を知らぬ者をJe’daiiの戒律で裁くことに、ダークサイドを選んだのではなくダークサイドしか知らぬ者にバランスを熟考させることに意味があるのか・・・? とりわけフォース・ヴィジョンを通じてXeshとの強い因縁を感じるShae Kodaは、彼にJe’daiiとしての教えを説くべきであると強く主張したのでした。

しかしJe’daiiの指導者Ketuの意志は頑なでした。まるで厄介払いかのようにBoganへと追放されたXeshはそこで無為の日々を送ることを余儀なくされますが、やがて一人の男がその前に立ちはだかるのでした。

Boganに流刑となったXesh

追記1:フォースか、自我か

本作冒頭で窺われる主人公たち若手Je’daiiと指導者Ketuとの間には、この後も多くのジェダイたちを惑わせることになるフォース・ヴィジョンに対する姿勢が横たわっているようです。強いフォースの持ち主はときに未来を暗示する様々なイメージを垣間見ますが、それが確かな未来を示しているのか、それとも数ある可能性の一つに過ぎないのか、そもそもそれが真にフォースによってもたらされたものなのかすら、知る者は一人として存在していないのでした。

「フォースを信じる」のがジェダイの本分であるのなら、フォースがもたらすものをそのまま受け容れることが正しいのかもしれません。しかし自ら考え感じることができる、またはそうせざるを得ない人間にとって、それは「盲信」と「思考放棄」という忌むべきものへの入り口でもあります。

自らが望まぬヴィジョンを前にしたとき、それをフォースの意志であるとして従容と受け入れるべきなのか、それともそれを自らが望む形に変化させるべく努力を重ねるべきなのか、それともそのようなものはまやかしに過ぎないと無視し去るべきなのか・・・。

神の導きとも悪魔の誘惑とも受け取れるフォース・ヴィジョンを見た者の心は千々に乱れます。後にアナキン・スカイウォーカーは母と妻の死を垣間見たことで大きく感情を揺さぶられ道を誤って行き、その息子ルークもまた待ち受ける友の苦難を垣間見たことで一時的にジェダイの修行を投げ打ってしまいました。

直感と考察、合理と非合理。私たちもときに悩まされる自我を持つ人間が永遠に逃れることのできない普遍的な問題を、スター・ウォーズは「フォースと自我」という形で問いかけているように思えます。

母の死、妻の死、自らの行く末のヴィジョンに悩まされたアナキン
過去と未来を幻視するルーク
クローン戦争期の堕落ジェダイ、クレルもまた共和国の崩壊とジェダイの壊滅を幻視したことで道を踏み外した

閑話休題。若きJe’daiiたちの訴えを退けた指導者Ketuの心にあったのも、彼らが見たと主張するヴィジョンに対する警戒心がその多くを占めていたのでした。しかも彼が同じ思いに駆られたのは今回が初めてではなかったのです。過去にもう一人、不可解なヴィジョンに基づく恐ろしい予言を行った人間の狂気を目の当たりにしていたのでした。

Prisoner of Bogan

その男の名はDaegen Lok。かつてタイソンを揺るがした戦争を終結に導いた英雄として称えられながら、いまでは「誤ったヴィジョンに憑りつかれた狂人」としてBoganに追放されていたJe’daiiのもと指導者の一人でした。

彼はJe’daiiに狂気をもたらすとして立ち入りを戒められていた惑星の深淵部奥深くへと立ち入り、そこで新たなる戦争の到来を思わせるヴィジョンに苛まれて以来、Je’daiiの武装と力の追及を激しく訴えかけていたのでした。その言動をダークサイドに傾倒しすぎた逸脱行為と判断した指導者たちはDaegenをBoganへと追放し、その地で彼は長らく失意の日々を送っていたのでした。

しかし新たなる”闇”の到来を察知したDaegenは再びその野心を燃え立たせます。なぜなら若きJe’daiiたちと同じく彼もまたヴィジョンを通じてXeshの存在を感知した一人であり、なにより彼が持つForcesaberはかつて自分が垣間見た軍勢がふりかざす「燃える剣」に他ならなかったからです。

言葉巧みにXeshを引き込み脱獄に成功したDaegenは、来たる戦争に備えてならず者たちを説き伏せての軍団づくりに精を出します。長い追放を経ても彼の狂気は微塵も衰えず、いよいよその強さを増しているかに見えました。

かつて自ら打ち破った敗軍の将たちに呼びかけるDaegen

しかし彼を突き動かしていたヴィジョンは決して彼だけが見た幻影ではなかったのです。

かつて彼の無謀な冒険に同行したJe’daiiの一人Hawk Ryoもまた、まったく同じヴィジョンを見ていながらそれを信ぜず、指導者たちへの必死の訴えを行うDaegenをよそにそれを「幻」と一刀両断していたのです。

しかしJed’aiiたちの「常識的」判断をよそに、彼らが住まう世界のはるか遠くで恐るべき無限帝国がタイソン星系侵略に向けて刃を研いでいたのでした。

タイソンの深淵へと降るDaegenとHawk

追記2:Daegen Lokとサイフォ=ディアス

さて、Daegen Lokという人物は『クローンの攻撃』で言及されたクローン軍団創設の依頼主サイフォ=ディアスを彷彿させはしないでしょうか? ともに迫り来る戦乱を予見した両者はあるいは密かに、あるいは公然と対抗措置を講じ、「軍隊の創設」というジェダイにあるまじき目的に向かって邁進して行ったのでした。

もしも両者が目の当たりにした戦乱と破滅に対するヴィジョンを当時の指導者層たちが真剣に取り合っていたならどうなっていたでしょうか? 彼らが説くバランスに准じて体制内での議論を繰り返し、いたずらに先鋭化して行く事態を避けられれば、結果としてもたらされた混乱はより少ないものになっていたかもしれません。

We must adjust to the times. Look, When Obi-Wan taught me, we were keepers of the peace. But now, to win this war, Ihave to teach you to be a soldier.

(役割は状況によって変わる。僕がオビ=ワンについたとき、ジェダイは平和の守護者だった。でも今は、戦争に勝つには兵士になる必要がある)

アナキン・スカイウォーカー ドラマ『アソーカ』より。

本作の時代においても、共和国末期においても、ジェダイが戦いを避けるという選択肢はあり得なかったでしょう。そういう意味では彼らの予見はまったく正しいものでした。そしてそれまで安住していたバランスを放棄することとなった結果、Jed’aiiたちは従来の生き方を大きく変えることを強いられ、ジェダイたちはシスの掌中に落ちて破滅の一途をたどったのでした。

偉大なる先覚者にして避けられない破綻の足音を告げる者。誰からも理解されず既成秩序に疑問符を叩きつけたDaegenとサイフォ=ディアスはスター・ウォーズ世界のカッサンドラとも言うべき悲劇的な役回りを宿命づけられているようです。

来たるべき戦争に備えて力を追い求めるDaegen Lok
来たるべき戦争に備えてクローン軍団創設を推し進めたサイフォ=ディアス

フォースの絆、それが生むもの

DaegenとXeshの脱獄を察知したJed’aiiたちは直ちに追っ手を差し向け、かつて彼の同志であったHawk Ryoを始めとするJed’aiiたち、そしてヴィジョンを通じた強い因縁を持つShae Kodaたちの奔走の甲斐あって着々と自らの軍団創設を推し進めて行く二人を追い詰めて行きます。

かつての”裏切り”を難詰しあうDaegenとHawk、その内に眠る良心に呼びかけつつライトサイドへの転向を呼びかけるShaeとそれを飽くまでも拒むXesh。それぞれの因縁と思いを胸に剣を交えるJed’aiiたちの戦いが本作のハイライトを飾ります。

果たしてDaegenの長きに渡る怨念をめぐる戦いはどのような結果を迎えるのか。そしてDaegenとShaeの間で光と闇を移ろうXeshは戦いの果てにどのような決断を下すのか。スター・ウォーズの代表的テーマの一つである「選択」がクライマックスを大いに盛り上げて行きます。

しかしJed’aiiたちが奔走している間、無限帝国がいつまでも手を拱いているはずもありませんでした。ラカタの支配者の一人Skal’nasは自らが使役するForce HoundのTrillを遣わし、行方知れずとなったXeshの捜索にあたらせていたのでした。そしてTrillもまたJed’aiiたちとは別の形で、Xeshと特殊な絆で結ばれていたのでした・・・。

因縁の刃を交わすDaegenとHawk
Xesh探索のためタイソンへと降り立つTrill

追記3:フォースの絆

前作から続くSaheたち若きJed’aiiたちとXeshの因縁、そして本作で本格的な活躍を見せるTrillとXeshとの間に横たわる関係性は、後に展開するシークエル三部作の主人公レイとベン・ソロを繋ぐフォースの絆「フォース・ダイアド」を彷彿させます。

スター・ウォーズにおいてフォースによって特別な関係性で結ばれるForce bondフォースの絆という概念は古くから見られ、各種スピンオフ作品群に登場し、やがてカノン設定への移行後も引き継がれて『クローン・ウォーズ』におけるヨーダとドゥークーの関係、『反乱者たち』におけるエズラとモールの関係に見られ、シークエル三部作におけるレイとカイロ・レンとを結ぶ、時空をも超えて作用するフォース・ダイアドという形へと発展。その神秘的な関係性はフォースの奥深さをいや増すものとして多くのファンを魅了します。

ジェダイ時代に築かれたヨーダとの絆はドゥークーが暗黒面に堕ちた後も持続された
互いの目的のため本来は宿敵同士であるエズラとモールの間にフォースの絆が築かれた
レイとカイロ・レン。フォース・ダイアドの絆は時空をも超えて互いを強く結びつけた

追記4:”始まりの地”ダソミア

Xeshの登場とそれに伴う未知なる敵との遭遇に備えて持てる限りの知識を集めるJed’aiiたちはとうとうその正体へと至る手がかりを発見します。太古のホロクロンの解読に成功したJed’aiiたちは、既に銀河の大半を手中に収めた邪悪な無限帝国の主ラカタたちの正体を知ることになるのでした。

太古の記録者はもはや滅び去ったいにしえの種族Kwaの長老A’nang。彼は自らの種が犯した過ちを切々と語ります。かつて彼らは後にフォースと呼ばれることになる”the Power of the Cosmos”を用いて周囲の種族に「文明を授ける」ことができるほど高度な社会を築いていました。

しかし未知領域に位置する辺境惑星に住まうラカタたちはもたらされた文明を破壊と支配に悪用。ついには自分たちを危険視するKwaたちまでも血祭りに上げてしまったのです。失意のKwaたちは故郷である惑星ダソミアへと退き、以降銀河の覇権を握ったラカタたちの暴政に為す術を持たず、ついにはKwiという原始的な種族へと退化してしまったというのです。

Kwaとラカタのファーストコンタクト

銀河史の曙に文明を築いた人々がダソミア出身であるという設定はドラマ『アソーカ』での展開を連想させます。レジェンズ、カノンともに「魔術」という形でフォースを駆使した「ダソミアの魔女」は別銀河の惑星ぺリディアにルーツを持つとされ、スター・ウォーズ銀河における文明の起源が別銀河にあるかもしれないという可能性が示唆されました。それを遡ること約11年、レジェンズ作品である本シリーズにおいて既にダソミアが最古の文明を持つ地のひとつとして設定されていたのは面白い事実です。

Jed’aiiたちにいにしえの歴史を説くA’nang
ぺリディアに住まうダソミアの魔女の祖先グレートマザーたち

参考資料

本作は未邦訳作品であるためKindle等、電子書籍でお求め頂くのが簡便かつ安価です。

本シリーズの根幹であるスター・ウォーズに触れるには全作品を網羅したDisney+での視聴がもっとも効率的です。

Hulu | Disney+ セットプラン

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