『ジェダイ物語(Tales of the Jedi )』シリーズ〈繰り返されるシスの生き様〉【レジェンズコミック(未邦訳)】(3 of 3)

レジェンズコミック
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舞台となるのは前作品群を遡ること約1000年。エグザ・キューンがその遺産を継承したシス卿ナガ・サドウの野望を中心として巻き起こされ、歴史上「ハイパー・スペース大戦」と呼ばれる戦いの様相が描かれます。

主人公となるのはゲイヴジョリダラゴン兄妹。不幸にしてシスの野心に巻き込まれた彼らの悲劇を中心に、恐るべきシス帝国の侵略とそれに立ち向かう共和国とジェダイ騎士団、そして後に「クラース」の温床となるエンプレス・テタ星系の統治者エンプレス・テタの活躍が縦横無尽に描かれます。

『シスの黄金時代』

#1カバーアート:若き日のオダン=ウーア
#2カバーアート:ダラゴン兄妹
#3カバーアート:後継者の対立を諫めるマルカ・ラグノスの亡霊

無法と無秩序が蔓延るコロス星系に変化の時が訪れていました。七つの惑星に割拠する権力者たちは不法な手段で希少な資源カーボナイトの利益を独占していましたが、正統な所有権を主張する同地の女性王族テタは共和国の後ろ盾を得て大規模な星系統一戦争を開始したのです。ジェダイ騎士団から派遣された高名なジェダイ、メミット・ネイディルや若きジェダイ、オダン=ウーアの補佐のもと着々と戦果を挙げてゆくテタはついに星系の統一を成し遂げ、ここに彼女は名実ともに「女帝テタエンプレス・テタ」となり、コロス星系は優れたリーダーである彼女の名を取ってエンプレス・テタ星系と呼ばれることになったのでした。

この戦いに大きく貢献したのは、後にジェダイ最長老にして知識の守り手として尊敬を集め、しかしジェダイの英知略奪を図るエグザ・キューンの手によって非業の死を遂げることになるオダン=ウーアです。戦いよりも学究の日々を送ることを良しとする学者肌のジェダイである彼は、過去の記録から後にノーミ・サンライダーがその最大の使い手となる「戦闘瞑想バトル・メディテーションの技術をマスターすることで敵の士気を大きく削ぐことに成功。可能な限り無用な流血を避けての戦争終結に寄与したのです。とはいえ戦争において悲劇的な流血を避けることは不可能です。統一戦争最後の戦いとなった惑星キレックの戦いで、当地への補給物資運搬を請け負っていた民間船パイロットのダラゴン夫妻が戦火に巻き込まれて命を落とします。あとに残された子供たちゲイヴとジョリは悲嘆に暮れながらも父母の忘れ形見である宇宙船〈スターブレーカー12〉だけを元手に、兄妹力を合わせて生きて行くことを誓い合うのでした。

#4カバーアート:シスの刻印を受けるナガ・サドウ
#5カバーアート:オダン=ウーアとエンプレス・テタ
#6カバーアート:シス帝国から相当するジョリとほくそ笑むサドウ

兄妹は未だ開拓途上のハイパー・スペース航路を探求する危険な探検家として身を立てることを目標としていました。惑星との衝突や異次元での放浪という一歩間違えば命など消し飛んでしまうリスクと引き換えに、有用な航路を発見すれば一攫千金も夢ではないという、未だ開拓時代である当時を代表する職業の一つです。しかし兄妹の業績は芳しくなく、一攫千金はおろか、彼らが発見した航路を使用したことで事故に遭遇し大損失を被った商人を激怒させたことで命を狙われる窮地に陥ってしまったのでした。暗殺者の魔の手から逃れるため決死の逃避行を繰り広げる兄妹はハイパー・スペースへの遁走を試みますが、その航路を選ぶ猶予はありませんでした。運を天に任せてでたらめな座標を打ち込んだ二人がたどり着いたのは未知の惑星であり、そこでは折しも盛大な葬儀が執り行われていたのでした・・・。

兄妹がたどり着いたのは惑星コリバン。かつてフォースの暗黒面への傾倒によってジェダイと対立の挙げ句破れ、いずこともなく消え去ったカルト集団は共和国から遠く離れた宙域へと落ち延び、この地で原住民シス族たちを支配して帝国を築き上げ、以来「シスの暗黒卿」として幾世紀にも渡って繁栄をほしいままにしていたのでした。兄妹がたどり着いたのは偉大な支配者として君臨した暗黒卿マルカ・ラグノスの死後、その葬儀も終わらぬうちに帝位後継と帝国の行く末をめぐって改革派のナガ・サドウと保守派のルド・クレシュとの間での派閥抗争に揺れる「シス帝国」だったのでした。二人の闖入者を共和国の先兵と決めつけ即刻処刑を主張するクレシュに対し、サドウはこれを自らの野望達成への好機と捉えます。この二人をうまく利用し、既に失われた共和国へのハイパー・スペース航路を発見できれば帝国は新たなる侵略によって栄え、自分の名は永遠に称えられるであろうと・・・。

『シス帝国の没落』

#1カバーアート:ナガ・サドウ
#2カバーアート:ジョリ・ダラゴン
#3カバーアート:オダン=ウーア

欺瞞と裏切りを事とする稀代のエゴイストの集団であるシス卿のなかでも、ナガ・サドウの謀略は群を抜いていました。密かに兄妹を匿ったサドウはフォース・センシティヴであった兄ゲイヴを言葉巧みに誘惑して弟子とし、妹ジョリの共和国領への逃亡を許し、すべてを共和国の見せかけることで同胞たちを欺き、共和国侵略への機運を醸成します。多くの同調者を得た彼はついに政敵クレシュをも暗殺したことで国内方針の一致を完成させ、逃亡したジョリの〈スターブレーカー12〉に据え付けた追跡ビーコンを追ってその大軍勢とともに共和国征討へと旅立ったのでした。

多くの苦難を潜り抜けてテタ星系へと帰り着いたジョリはしかし、更なる苦難に見舞われます。度重なる誤解によって違法な旅行者として拘留された彼女は必死に共和国に迫る危機を訴えるものの、多くの人々にとってもはや伝説に属する「シス帝国」にまつわる話を真に受けるものはどこにもいません。共和国を、なにより兄を救うべく必死に奔走する彼女はがむしゃらな冒険の果てに統治者テタへの直訴に成功。フォースを通じて彼女と同様にシスの脅威を察知していたオダン=ウーアの理解と口添えを得たジョリの言い分はついに聞き届けられたのでした。

#4カバーアート:ゲイヴ・ダラゴン
#5カバーアート:エンプレス・テタ

しかし長い平和を満喫する共和国の首都コルサントの人々はテタとジェダイの警告を真に受けず、防戦に向けての一致団結など夢のまた夢でした。長きに渡る戦争を終えたばかりにも関わらず、テタは数少ない理解者たちと共に再び剣を取る決意を固めます。もちろんその傍らには一連の戦争を彼女と共に潜り抜けたジェダイの庇護者メミットと若きオダン=ウーアをはじめとするジェダイたちの姿があり、さらにはかつて勇猛な敵として彼女に立ちbふさがりながらもその後の賢明な統治に敬服したキレックの民を中心とする旧敵対勢力との同盟も盤石。祖国防衛に燃える彼女たちの前に、ついに恐るべきシス帝国の軍勢はその姿を現したのでした。

エンプレス・テタ星系だけでなく首都コルサントをも同時に強襲したシスの大軍は各地でジェダイと共和国軍を圧倒します。彼らを支えるのは暗黒卿たちがその手足として使役するシス族とマサッシ族の獰猛な戦士たちを中核とする軍団でしたが、その脅威を支えたのは「戦闘瞑想」のシス・バージョンとも言うべき幻影術。暗黒面の幻影に翻弄される共和国軍の運命は風前の灯火かと思えました。しかし彼らの欺瞞と謀略に充ちた生き方が致命的な裏切りを招きます。サドウの誤魔化しを喝破し、利用されていたに過ぎなかったことに怒りを燃やしたゲイヴが単身に不意打ちを食わせたことで彼が生み出していたシスの幻影は消失。すべてを見抜いたジェダイと共和国兵の大反撃に為す術を失くしたシス帝国軍はあえなく潰滅しようとしたのでした。しかしこの狡猾なシス卿は、最後の最後に恐るべき一手を用意していたのでした。この絶望的な形成を一挙に逆転させ、共和国艦隊を宇宙の藻屑に変えるべく、サドウはその持てる力を最大限に集中させるのでした・・・。

ナガ・サドウとエンプレス・テタ。シスの限界について

本シリーズを通して、というよりSWという物語全体を通して印象的なのはやはりシスを名乗る人々の近視眼的な狭量さにあるでしょう。本作の遥か後にシスによる銀河支配を実現することになるダース・シディアスは巧妙な権力奪取に比べればお粗末極まりない不信と力押しの政策によって僅か20年弱という短命政権の後に裏切りの犠牲となり、本作で野望実現に向けて邁進するナガ・サドウもまた、味方ですら駒としか考えぬ欺瞞に充ちたやり口によって最終的にゲイヴによる致命的な裏切りに遭遇して勝利の機会を逸しています。いったい頭が良いのか悪いのか判然としかねる彼らシスの生き方に共通するのはやはり「他者を利用対象としか考えない利己主義」に集約されるでしょう。

ともに大帝国創設を悲願とする彼らの野望は、シスのさがとも言える「支配欲」に結びついています。しかし彼らの野望は常に「徹底した利己主義」というもう一つのさがによって足枷をはめられてもいるのです。なぜなら「支配欲」と「利己主義」は他者を打ち負かすには有効な性向となりますが、他者を支配し続けるとなれば一転してまったく非有効的な性向になってしまうからです。本作で邪悪な支配者として描かれるナガ・サドウと対照的なのは、同じく支配者としてコロス星系を統一しながら遥か未来までその名声を留めることになるエンプレス・テタでしょう。

サドウは徹底した利己主義と冷酷によって同胞たちを謀り政敵を暗殺してシス帝国を一挙に掌握しました。そのスムーズな成功は見事と言う他ありませんが、共和国侵攻を実現させるべく妹ジョリを利用された弟子ゲイヴは怒りを爆発させ、やがて修羅道の如きシスの生き方を放棄して裏切りに走ります。そして弱小勢力に貶められながらなお残存し続けた反対派勢力は、侵略失敗の憂き目を見たサドウの脅威として再びその前に立ちふさがったのでした。一方テタは統一戦争の過程で多くの敵を作り幾度も暗殺者に襲われるという危険を味わったにもかかわらずかつての敗者たちを赦し、キレック兵をはじめとする元敵対勢力はその度量に敬服して頼れる同盟者となり、一丸となってシスの脅威に対抗できたのでした。

他を攻めるにしても守るにしても、畢竟他者との協調を実現せぬ限りその成功はおぼつかないのでしょう。シスとマサッシという明らかに知性に欠ける従順な奴隷たちの上に絶対権力者として君臨し、狭い世界で栄華を極めたシス帝国は、どうやら他との交流を持たないが故の先細りの危機に見舞われてもいたようです。それがナガ・サドウを領土拡張政策へと推し進める理由の一つともなったようですが、やはり他者との協調に欠ける彼は身内の裏切りによってその野望に終止符を打たれてしまいました。かつての敵をも味方に引き込むことに成功したことで見事祖国防衛に成功し、レガシー時代に至るまでの繁栄の基盤を作り上げたテタの開放路線となんと違うことでしょう。

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