『ジェダイ物語(Tales of the Jedi )』シリーズ〈神話時代のジェダイたち〉【レジェンズコミック(未邦訳)】(1 of 3)

レジェンズコミック
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広大なSW世界は幅広い時間軸で構成されており、現行カノン設定では「ハイ・リパブリック時代」と称される銀河共和国最盛期を舞台として、映画本編の数世紀前を描く小説・コミックシリーズ『ハイ・リパブリック』や3Dアニメシリーズ『ヤング・ジェダイ・アドベンチャー』、また近日公開予定のドラマシリーズ『アコライト』といった「過去の物語」が展開しており、今後も展開し続けて行くことでしょう。

しかしSW世界の「過去」を描く試みは今に始まったことではありません。今ではレジェンズと総称されるスピンオフ作品群が続々と刊行された90年代後半において、映画本編の未来を描く『ダーク・エンパイア』三部作や『ジェダイ・アカデミー』三部作と連動する形で、その遥か数千年前の過去を描く本シリーズ『ジェダイ物語(Tales of the Jedi)』もまた刊行されたのでした。

特徴と魅力:失われぬ神話性

本シリーズの魅力はなんといっても映画本編の数千年前という特徴を活かし、種々の制約にとらわれることなく展開して行く新たなるSWユニバースの自由度と壮大さにあるでしょう。そこで積み上げられる全盛期ジェダイ騎士団とその前に立ちはだかる邪悪なシスの暗黒卿たちの長く激しい戦いの歴史は、直接に関連する『ダーク・エンパイア』や『ジェダイ・アカデミー三部作』に留まることなく後続作品群の多くに大きな影響を与え、レジェンズ史そのものに様々な形で伏線や設定を提供するに至り、さらにその一部はカノン史にも名を変え実を変えて引き継がれるほど。例えば『Tales of the Jedi』という本シリーズ名そのものもまた、3Dアニメシリーズとして公開された『テイルズ・オブ・ザ・ジェダイ』という形で流用されています。

たしかにコミックという媒体ゆえにやや急すぎる物語展開各キャラクターの掘り下げ不足など、難点も少なくはないシリーズではあります。しかし「現代の神話」と謳われつつも多くのスピンオフ作品群によって日々そのディティールを深め、良くも悪くも生々しい手触りを獲得して行く一方に見えるSWユニバースにあって、そのような風潮に超然と背を向ける本シリーズの荒唐無稽なまでの壮大さはむしろ「永遠の神話性」として私たちの心を惹きつけることでしょう。本シリーズによって形作られる物語世界には、SWが失いつつある「神話的世界観」がしっかりと息づいているのです。

『旧共和国の騎士(Knights of the Old Republic)』編【4000 BBY】

『旧共和国の騎士(Knights of the Old Republic)』カバーアート

舞台となるのはルーク・スカイウォーカーがジェダイの末裔として活躍した時代を遡ること遥か4000年の昔。銀河共和国は繁栄を謳歌し、それを守護するジェダイ騎士団も隆盛を誇っていました。本作は『ウリック・ケル=ドローマとビースト戦争(Ulic Qel-Droma and the Beast Wars of Onderon)』と『ノーミ・サンライダー伝説(The Saga of Nomi Sunrider)』と題された二つの物語の総称であり、両作品の刊行後に名づけられたものです。

主人公となるのはウリック・ケル=ドローマとノーミ・サンライダーという二人のジェダイ。物語はつい先ごろ共和国に加わりその存在が認知されたばかりの惑星オンダロンをめぐる不穏な情勢に端を発します・・・。

#1カバーアート:ウリック・ケル=ドローマと古のジェダイたち
#2カバーアート:巨獣とともに戦うトット・ドニータ

【あらすじ】:オンダロンの歴史は戦いの歴史である。衛星ディクサンからやって来る獰猛な巨獣の餌食とされるようになった太古のオンダロン人は本来の温和な性質を捨て去ることを強いられ、武器を手に戦士となった。やがて強固な防壁に守られた大都市イジズを築くことで身を守ることに成功した彼らは外部に広がる大森林を「流刑地」に定め、無法者や犯罪者たちを追放しては巨獣たちが彼らを貪るに任せた。

しかし一部の屈強な追放者たちは巨獣を打ち倒し飼い慣らす技術を習得。恐るべき「ビースト・ライダー」となってイジズに住む人々を復讐の標的とした。以来オンダロン世界は大都市イジズと大森林とに二分され、そこに住む者同士の終わりなき内戦が幾世紀も続いた。共和国に加わり「偉大な戦士」であるジェダイの声望を聞きつけたオンダロン女王アマノアは長きに渡る内戦に終止符を打つべくジェダイ騎士団に助力を依頼、惑星アーカニアを本拠とするジェダイ・マスター、アーカ・ジェスウリック・ケル=ドローマをはじめとする優れた弟子3名をオンダロンへと派遣した。戦争の助太刀ではなく平和的調停を命じて。しかしオンダロンでは意外な事実と恐るべき黒幕がウリックたちを待ち受けていたのだった・・・。

【感想】:「共生」とはSWを語るうえでいくら強調してもし過ぎることはないメインテーマの一つですが、本シリーズ第一作である本作もまた、異種間の共生をめぐる物語が展開しています。現実世界における富裕層と貧困層の住み分けよろしく二分された世界しか知らないオンダロン人は大森林にすむ「ビースト・ライダー」たちを蛇蝎のごとく恐れ卑しんでいます。

イジズの人々にとってもはや相手は「害獣」のような存在であり、「なぜ戦わねばならないのか」に思いを馳せることもないまま戦い続ける無明に明け暮れています。しかしウリックたちは到着早々引き起こされた「ビースト・ライダー」たちによるオンダロン王女誘拐事件を追ううち、両者の対立に隠された真実を知るに至ります。

恐ろしい犯罪集団と思われた「ビースト・ライダー」たちは実は専制的なオンダロン政府に反対したために「反乱者」として弾圧された者たちの末裔であり、ジェダイたちが味方すべきと思われたアマノアたちこそが打ち倒すべき圧制者であったのです。件の王女誘拐も、密かに惹かれ合っていた「ビースト・ライダー」頭目モドン・キラの息子オーロンとオンダロン王女ガリアとの叶わぬ恋を成就させるために仕組まれたものだったのでした。

オンダロン情勢の真相を知ったウリックたちは圧制者の打倒と分断された人々の融和を目指して立ち上がります。しかし平和を旨とするジェダイの道に従うべしという師アーカの言葉に従い飽くまでも話し合いによる解決を図るウリックたちを、更なる意外な真実が待ち受けていました。なんとアマノアらを操る真の黒幕は遥か古代に滅びたはずのシスの暗黒卿フリードン・ナッドであり、かつてオンダロンに君臨した彼はその死後も亡霊となって支配者たちの心を奪うことで長い年月に渡る邪悪な支配を継続していたのです。

アマノアをはじめナッドを信奉するイジズの人々は暗黒面によって大きな力を与えられ、ウリックたちは苦戦を強いられます。果たして3人のジェダイと「ビーストライダー」たちはオンダロンに蔓延する邪悪な支配を覆すことができるのでしょうか・・・。

本シリーズの主人公の一人となるウリック・ケル=ドローマは優秀ながら向こう見ずなところが玉に瑕という後の新三部作におけるアナキンを彷彿させるキャラクターとして描かれ、弟ケイ・ケル=ドローマ、同胞トット・ドニータと共に冒険を繰り広げます。戦いを終えた彼はかつてジェダイでありながら暗黒面に囚われ、恐るべき暴君となったフリードン・ナッドの生涯に思いを馳せますが、それは意外な形で彼の人生に影を落とすことになるのでした・・・。

#3カバーアート:夫の死を前に悲嘆に暮れるノーミ・サンライダー
#4カバーアート:宿敵ボガ・ザ・ハット
#5カバーアート:マスター・ソンと共に戦うノーミ・サンライダー

【あらすじ】:サンライダー家はフォースに恵まれた一家であった。夫アンデュアは優れたジェダイとして頭角を現しており、幼い娘ヴィマのなかにも強いフォースが息づいていた。妻ノーミもまた強い資質に恵まれていたが、彼女は力を用いることを極度に恐れていた。大いなる力を用いるには彼女は弱く、臆病であった。

しかし残酷な運命が夫を奪い我が子にまでその手を伸ばそうとしたとき、彼女はついにフォースに心を開いた。しかし自らの手で運命を切り開き、偉大な師のもとでジェダイとしての修業を開始したノーミはそれでも考え、迷い続ける。なぜ自分はジェダイでなければならないのか、その力を醜い戦いに用いねばならないのか・・・。

【感想】:オンダロンにおける内戦の趨勢や恐るべき暗黒卿との対決など、銀河史にまつわる大きなスケールで展開した前作に比べてキャラクター個人の内面を描くことに重点を置いた作品となっており、物語は一貫してジェダイという生き方に対する疑問を拭いきれないノーミ・サンライダーの葛藤と成長をテーマとしています。

というわけで本作の舞台やキーパーソンもまた、映画本編でルークが本格的にジェダイの修行を行った惑星ダゴバや師ヨーダを彷彿させるオマージュに充ちているようです。舞台となる惑星アンブリアは一面に荒野が広がる不毛の惑星であり、暗黒面の囁きが響く不気味な湖が彼女の心を脅かします。本作のキーパーソンであり偉大なジェダイ・マスターとされるマスター・ソンもまた一見野蛮な野獣のような外見がノーミと私たちの思惑を裏切ります。

物語の展開としては冒頭で撃退されながらもノーミの持つアデガン・クリスタルを諦めきれないギャング団首領ボガ・ザ・ハットによる執拗な追及となるのですが、読みどころとなるのはもちろんアンブリアで修行を積んで行くノーミとソンのジェダイという生き方をめぐるやりとりでしょう。

臆病なまでに心優しいノーミは、特に恐ろしい凶器となり得るライトセーバーに激しい抵抗と嫌悪感を抱いています。どれほど修行を積んでも彼女のなかでライトセーバーは恐ろしい夫の死と、それに伴う流血の惨事の記憶と結びついた忌まわしい凶器に過ぎなかったのでした。代わって彼女が長けていたのは「戦闘瞑想バトル・メディテーション」と呼ばれる云わば幻影戦法。相手の意識や敵意を幻覚作用によって混濁させ、互いに相争わせたり戦意喪失を促すという高度な技術ですが、マスター・ソンはそれでもライトセーバーこそがジェダイの命であると説きます。それは確かに強力無比な武器でもあるが、それよりもより深くフォースと繋がり、その流れに集中し、自らのなかに感じるために不可欠な依り代であるのだ、と。

果たしてノーミは己のトラウマを乗り越え、ジェダイの道を見出すことができるのでしょうか。本作は展開としては地味ながらジェダイの精神性にまで深く思いを馳せさせる名作と言えるでしょう。大いなる力を持つ者は大いなる戦いと無縁でいることはできません。しかし戦いに身を投じることと、戦いに呑み込まれることは同義ではないでしょう。このもっとも戦いを忌み嫌うジェダイは、もっとも大きな戦いに身を投じ、やがてもっとも偉大なジェダイの一人への道を歩んで行くのでした。

『フリードン・ナッドの反乱(The Freedon Nadd Uprising)』編【3998 BBY】

#1カバーアート:フリードン・ナッドと信奉者たち
#2カバーアート:ナッド教徒を打ち破るジェダイたち

【あらすじ】:暗黒卿は死せず。長くオンダロンを混迷に陥れていたシス卿フリードン・ナッドの亡霊を封印するためその遺骸を遥かディクサンの月へと埋葬し直そうとするジェダイたちだが、暗黒卿の崇拝者「ナッド教徒」たちは決死の覚悟でその前に立ちはだかるのだった・・・。

【感想】:オンダロンのビースト戦争の後日譚となる物語であり、前二作の主人公ウリックとノーミが合流して共通の敵と戦うクロスオーバー的作品となっています。しぶとくも蘇ったフリードン・ナッドドの亡霊は、アマノアの夫であり本来のオンダロン国王でありながら心神耗弱ゆえに療養施設に収容されていたオムミンと結託して再び恐るべき力を発揮、強力なマスターであるアーカ・ジェスをも打ち破り捕虜としてしまいます。

蘇った暗黒卿の加護を受け、再び闇の世界を取り戻さんと奮闘するナッド教徒たちの攻勢の前に苦戦を強いられるジェダイたちはオンダロンに光をもたらすためあらん限りの力を結集して戦いを繰り広げるのでした。

と言うわけで物語としてはシンプル極まりない構成ながら、不気味なのは本筋と並行して展開する放蕩貴族たちの不穏な足取り。惑星エンプレス・テタの王族の一員であるサタールアリーマは有り余る富と時間に退屈を持て余し、古代シスの存在や魔術に強い興味を抱きます。やがて首都コルサントの博物館から貴重なシスの遺物を盗み出した二人は折しも暗黒卿の復活によって風雲告げるオンダロンへ赴き、フリードン・ナッドから暗黒面の力を授かるに至るのでした。

物語はオムミン王の死とナッド教徒の鎮圧によって幕を閉じ、フリードン・ナッドの遺骸は遠くディクサンへと移送されました。しかし彼から暗黒の力を受け継いだサタールとアリーマはジェダイたちに気付かれることなく再び銀河へと飛び立ち、偉大なマスターたちは光と闇の戦いの未来を告げる予言に心穏やかではいられません。どうやら勝利に終わったかに見えたこの物語も、この後に長く続く大いなる戦いへの序章に過ぎないようです。

≫次作『シスの暗黒卿たち』『シス大戦』『贖罪』

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