『ダーク・エンパイア三部作』〈新旧ジェダイたちの戦い〉【レジェンズコミック】

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1991年というSW拡張世界の初期に制作された本シリーズは三部作構成となっており、昨今のリアリスティックな雰囲気に充ちたものとは異なり、世界観やフォース観に良くも悪くもの勧善懲悪風味を色濃く残す「レトロなファンタジー作品」といった趣きの世界観を味わうことができます。ジェダイとして成長したルークはジェダイ騎士団の復活を目指し、クローン技術とシスの魔術によって蘇った皇帝パルパティーンと新たなる戦いを繰り広げます。

また、本作は同じ顔触れの製作者たちによって同時期に並行して企画されたEP4の約5000年前の物語を描く未邦訳コミックシリーズ『Tales of the Jedi』(2022年のアニメ作品とは無関係)とキャラクターや設定が連動しており、SWユニバースを一挙に拡大した作品群の一つと言えるでしょう。

「尻すぼみ三部作」〈その魅力と難点〉

本作では帝国の粛清を生きのびた共和国時代のジェダイたちの復帰、太古の昔に生きたジェダイたちに関する言及、ルークと共に起つ新たなるジェダイ候補たちの活躍、そしてレイアとハンの間に生まれた双子のジェイナジェイセン姉弟、本シリーズのキーパーソンとなる末子アナキンと、新旧世代のジェダイたちの存在がフィーチャーされ、SW世界の世代的広がりを意識させてくれる壮大な作品でもあります。

勢力を盛り返した帝国は〈ワールド・デヴァステイター〉や〈ギャラクシー・ガン〉など〈デス・スター〉に負けず劣らぬ超兵器を繰り出し、映画本編では完全なる不意打ちによってその真価を発揮せぬまま舞台を去った皇帝も、その持てる力を総動員して同盟軍艦隊をあわや壊滅状態に追い込むという離れ業をやってのけるなど迫力溢れる展開や描写が目を惹きます。

ただしコミック作品としては老朽で、扉絵こそ魅力的ながら本編は粗雑な絵柄、動きを感じさせない構図、もたついたカット割りと、現代マンガを読み慣れた現代っ子には相当に辛い作品というしかありません。読み手は相当な範囲に渡って「脳内補完」を行う必要があるでしょう。

また、物語展開も冗長の感を免れず、第一作は文句ない傑作であるものの、第二作ははっきり言って凡作、第三作はまったくの駄作という「尻すぼみ三部作」というのが私の見立てです。

本作の大きなあらすじとなるのはクローン技術によって蘇生した皇帝率いる帝国の反撃にあるのですが、肝心のパルパティーンのキャラクターの劣化は絶句すべきもので、物語が進展するほどに憎むべき「暴君」や「悪人」ではなく単なる「小悪党」として矮小化されて行き、非常に辛いものがあります。

特に未邦訳となった第三作はストーリー展開の重要性に見合わぬ緊張感のなさで、「旧世代が命を賭して新たなる世代に希望を繋ぐ」という感動的なはずのストーリーが展開しているにも関わらず、まったく感動を誘わないという悲惨な出来栄えとなっています。傑作となる要素を多く備えていながら、かえすがえすも残念な完成度となっている作品。第三作のみ未邦訳なのもむべなるかなと言ったところでしょう。

『ダーク・エンパイアⅠ』〈ルーク堕つ!? 銀河の運命は〉

物語の舞台となるのはEP6の約6年後。〈デス・スター〉の撃破と皇帝パルパティーンの死によって銀河の覇権を握った反乱同盟軍は「新共和国」を名乗って新たなる支配者となり、ルークもジェダイとしての力を大きく伸ばして銀河各地で頻発する帝国軍残党との戦いを繰り広げていました。しかし両者の実力は未だ拮抗しており、本作が幕を開ける頃にはかつての皇帝側近グループや軍事司令官たちによる大反撃を防ぎきることができず、首都惑星コルサント陥落するという失態を演じています。

しかし蘇ったかに見えた帝国内部でも次期皇帝を巡る権力闘争を激化させて新共和国を滅ぼすには至らず、銀河はふたたび泥沼の戦争へと引きずり込まれて行ったのでした。物語の幕開けは一つの悲劇からはじまります。帝国の混乱を突いて首都奪還を目論む奇襲攻撃に参加した新共和国戦艦〈リベレイター〉が撃墜されたというのです。ジェダイの騎士の末裔ルーク・スカイウォーカーを道連れにして・・・。

本作の見どころは何と言ってもスカイウォーカー卿として暗黒面に足を踏み入れてしまったルークの行く末でしょう。撃墜された〈リベレイター〉から脱出し、帝国の中枢で蘇った皇帝と対峙したルークはなんと彼の弟子として生きることを決意。かつての「新たなる希望」は同盟軍の前に「新たなる脅威」として立ちふさがるのでした。もはや彼の耳には愛する妹レイアや旧友ハンの言葉も届かないようです。

しかしルークの真意は別の所にありました。彼は強大なパルパティーンを滅ぼすために敢えて暗黒面に足を踏み入れることでその力の源の秘密を探り出そうとしていたのです。とはいえかつて暗黒面に足を踏み入れて無事に生還したジェダイは存在しません。本作で登場する古代ジェダイの英知の結晶〈ジェダイ・ホロクロン〉に収められた膨大な知識はルークと同じく暗黒面に足を踏み入れ悲劇的な最期を迎えたウリック・ケル=ドローマの先例を伝え、その無謀にレイアは戦慄するのでした。

「新たなる希望」を得た帝国はさらに新兵器〈ワールド・デヴァステイター〉を繰り出し、同盟軍の重要拠点に甚大な打撃を加えて行きます。惑星を丸ごと破壊する代わりにその資源を食らい尽くす恐るべき新兵器を前に、同盟軍艦隊は多大な苦戦を強いられます。

果たして兄をあるべき道に復させようとするレイアの努力も虚しくジェダイ復興の礎ルークはこのまま暗黒面に呑み込まれてしまうのでしょうか? 同盟軍はその奮闘も虚しく根拠地のことごとくを〈ワールド・デヴァステイター〉によって食い尽くされてしまうのでしょうか?

本書には巻末にコミックゆえに限界のある人物・歴史的背景を補うため「シークレット・ファイル」なる覚え書きも併録されており、太古に生きたジェダイたちの伝説、暗黒面の可能性と限界、ルークたちの冒険に関する補足などの詳細が記録され、物語の理解をより厚みのあるものにしてくれます。

『ダーク・エンパイアⅡ』〈新たなる超兵器! 同盟軍の危機〉

レイアとの絆によってジェダイとしての道に立ち返ったルークの前に皇帝は滅びました。しかし彼の力を受け継ぐ7人のダーク・ジェダイたちは各地で攻勢を展開しており帝国の威勢は未だ健在です。しかも帝国は新たなる超兵器〈ギャラクシー・ガン〉を建造して同盟軍を窮地に陥れます。惑星を破壊し得る破壊力を持ったミサイルをハイパースペースに飛ばすことで銀河のどこにいても任意の惑星を破壊することが可能という恐るべき超兵器を前に同盟軍の本拠惑星ピナクルは絶体絶命の危機に陥るのでした・・・。

パルパティーンによって暗黒面の力を与えられたダーク・ジェダイたちの活躍、ルークによって見いだされ、あるいは発見された新旧世代のジェダイ登場、帝国が繰り出す新たなる新兵器の数々と、魅力的なはずのコンテンツが目白押しのはずがその多くが魅力に欠けるという残念な出来栄えとなっています。

まずセドリスという名のリーダーに率いられたダーク・ジェダイたち。現今のカノンシリーズならば尋問官レン騎士団といったポジションを占めるであろう彼らはほとんど活躍の場を与えられず、というか活躍するべき場でもあっさりフェードアウトしてしまい、粗雑な絵柄も相まってほとんど誰が誰かもわからぬままこれといった印象を残すことができていません。また本作において再びパルパティーンがクローンの肉体を得て蘇りますが、その人物像はもはやオレ様気質のガキ大将そのものといった矮小化がなされており、はっきり言って悪の魅力など薬にしたくともない惨状です。

そして新旧ジェダイたち。かつて暗黒面に囚われていたジェダイの子孫カム・ソルサーやジェダイと深い所縁を持つ惑星オッサス出身のレイフジェムイサナ姉弟、過去の罪深い行いを償うためにルークと行動をともにする古代の堕落ジェダイであるヴィマ・ダ・ボーダ、そして思わぬ形で思わぬ姿で登場して読み手の意表を突くウード・ヴナーなどバリエーションに富んだジェダイたちの存在は愉しいものですが、ただでさえ心理的情報量が少なく、また大した分量でもない作品のため多くのエピソードが「素通り」の印象でメリハリに欠き、また大粛清後も辺境惑星ガナスの王として生き延びた共和国ジェダイの生き残りエンパトジェイオス・ブランドは素晴らしい活躍を繰り広げるものの、そのコメディすれすれのデザインによって激しく興を削がれました。

エンパトジェイオス・ブランド

そして起死回生をかけて戦う同盟軍と帝国軍の戦いもゴチャゴチャと迫力に欠ける絵柄とはっきり言ってこれまたコメディすれすれの姿を持つ生物兵器〈ウォー・ビースト〉の存在によって大きく緊張感を欠くものとなっています。またついに発射された恐るべき〈ギャラクシー・ガン〉によって壊滅した惑星ピナクルから実は首脳部は事前に脱出していたという「サプライズ演出」も特に事情の説明や伏線があるわけでもないのでご都合主義の感が拭えず、キャラクターの魅力でもあらすじの緊迫感でも読み手を惹きつけることの甚だムズカシイ物語と言わざるを得ないでしょう。

帝国の切り札ウォービースト

『Empire’s End』〈どうしてこうなった・・・。銀河皇帝の最期〉

〈ギャラクシー・ガン〉によって絶対的優位を確保した帝国は同盟軍への最後の攻撃を敢行します。しかし日々劣化の度を激しくして行く肉体に悩まされるパルパティーンは自分の魂が乗り移るべき新たなる肉体を探し求めてジェダイの血脈を突け狙い、レイアとハンの末子アナキンにその標的を定めます。果たして風前の灯火となった同盟軍の運命は? そして強いフォースを身につけるであろうアナキンの運命は?

ついに皇帝パルパティーンの最期が描かれる重要極まりないはずの本作でもっとも残念なのは、ここに極まった感じのパルパティーンのキャラ劣化でしょう。死を迎えるたびにクローン技術で培養した肉体に魂を乗り移らせることで蘇生を果たしてきた彼はしかし、ルークや裏切者たちの画策によってすでに多くの「スペア」を失い後がなくなってしまいます。一刻も早く自分が乗り移るべき強靭な肉体を確保したいパルパティーンの焦りは募り、しかし焦りと怒りによって暗黒面に浸れば浸るほどその力によって肉体の劣化を早めてしまうことから怒りの発作を起こしては主治医に窘められるという醜態をさらしています。もはや悪役としてのカッコよさも憎たらしさも感じさせない「老醜」という言葉の相応しいパルパティーンの姿は「誰得だよ・・・」と嘆きたくなること請け合いなのです。

また、同盟軍の本拠地に留めの一撃として放たれた〈ギャラクシー・ガン〉の弾丸も特に何の説明も伏線もなく不発であったりと、前作の欠陥であったご都合主義も健在。「同盟軍vs帝国の運命を決する一大決戦!」や「ジェダイとシスの最終対決!」といった緊迫感溢れる演出もとくに為されないまま物語はいつのまにやら終幕を迎え、なんと老いさらばえたパルパティーンはそのヤケクソ的な行動の末に我が子を守らんとするハン・ソロのブラスターによってその命を絶たれることとなったのでした。

まさかの最期を迎えることとなったパルパティーンは、それでもなお最後の力を振り絞って自らの霊魂をアナキンに憑依させんと奮闘するのですが、エンパトジェイオス・ブランドが身を挺してそれを阻止。自らを食い破ろうとするシスの怨念を往年のジェダイたちの加護を得ることで防ぎ切り、その命と引き換えにとうとうパルパティーンを永遠に葬るのでした。

命を賭してアナキンを救うブランド

一読した後の正直な感想は「なんだこりゃ・・・」というもの。平板なストーリーと緊張感のない展開は前作から引き続き、冒頭文の繰り返しとなりますが「旧世代のジェダイが命をかけて新たなるジェダイを守ろうとし、遠い昔に死んだジェダイたちまでが手を差し伸べる」という感動的なことこの上ないはずのシーンがまったく引き立っていないのです。

リソースに充ちた名(?)作

数あるレジェンズ作品のなかでも本作はとくにシークエル三部作に取り入れられた要素が多いように思えます。

物語の基盤となるクローン技術による皇帝の復活と帝国勢力の巻き返し、第一作の見どころの一つであった独力で艦隊を壊滅させるほどの皇帝の凄まじいフォースの嵐、同じく第一作に登場したルークが仲間たちに見せたフォースの幻影、第三作に登場するスーパーレーザーを備えた〈スター・デストロイヤー〉、そして終幕を飾る自らの力に呑まれ、往年のジェダイたちの加護を受けた者によって滅ぼされる皇帝の最期etc…。

レジェンズ作品がカノン作品のリソースとなったということを改めて意識させられる作品です。EP9を観て本作を連想したオールドファンも多いのではないでしょうか?

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