第1作『Force storm』≫第2作『The Prisoner of Bogan』≫本作
あらすじ
映画本編を遡ること約36,000年前・・・。いにしえの種族ラカタ率いる侵略国家「無限帝国」の脅威を軸にジェダイ草創期の歴史を描く『DAWN OF THE JEDI』シリーズはついに終幕を迎えます。フォースの暗黒面をエネルギー源とする文明を駆使するラカタの支配者たちは膨大なエネルギー源となり得るJe’daii(ジェダイの前身)たちの本拠地タイソンの位置を発見。恐るべき大戦争の火蓋が切って落とされます。
一方、無限帝国からの亡命者Xeshがもたらした未知のテクノロジーForce saver(ライトセーバーの前身)を使いこなすことに成功したJe’daiiたちもまた、理不尽な破壊と混沌をまき散らす無限帝国の脅威から銀河を解放するべく一大決戦に備えるのでした。
しかし遥か未来に起こるクローン戦争がそうであったように、破壊と殺戮の連続である「戦争」の日々は確実にJe’daiiたちの心を蝕んで行ったでした。
そして一進一退の戦況を打破すべく考案された無限帝国の支配者Skal’nas暗殺に向かったXeshは、かつての主人たちのもとで忌まわしい記憶を呼び起こされ、呪うべき過去と希望ある未来の狭間で激しい懊悩に苛まれることになるのでした。
果たして無限帝国の猛攻の前にJed’aiiたちはどのような道を選ぶのでしょうか。そして闇に生まれながら光に焦がれるXeshは、己の忌むべき本質とどのように向き合うのでしょうか?
そして迫りくる破局を前に、フォースに充ちた惑星タイソンの奥底に眠る「大いなる秘密」が姿を現わそうとしていました・・・。
戦争とジェダイ
かつてフォースを通して「未知なる脅威」を説き、過てる予言者として放逐されていたDaegen Lokはその正しさが証明され、晴れて将軍として辣腕を振るいます。Force saberという強力な武器を携えたJe’daiiたちは後のジェダイたちがそうであったように光り輝く光刃を振りかざしながら、各地で一進一退の攻防を繰り広げて行きます。
しかしどのような目的を持とうとも「戦争」が果てしない破壊と殺戮の連続である以上、それに手を染める者たちの心を蝕まないはずはありません。後のように「平和の守護者」を標榜まではしていないJe’daiiですが、彼らが何よりも重んじていたはずのフォースの光と闇の「バランス」は、確実に闇の方向へと舵を切ろうとしていました。
彼らは後に勃発するシス戦争においても、そしてスター・ウォーズファンにはもっとも馴染み深いであろうクローン戦争においても、同じ矛盾に身を置くこととなりました。
怒りや憎しみに囚われることなくバランスを重んじるならば怒りや憎しみを力の源とする者たちの猛攻に屈することになり、それを拒否するならば彼らと同じ土俵に立って不毛な殺戮に加担するしかなくなります。しかしそもそも負の感情に乱されることなく敵を撃退し得たとしても、「暴力」によって事を解決したという事実に変わりはないでしょう。
「戦い」の場に身を置いた以上、「バランス」を至上命題とするJed’aiiまたはジェダイに打つ手はないのではないでしょうか。彼らにできるのは生きのびた後に自らを省み、本道に復するべく自浄や克己に努めることだけなのではないでしょうか? 戦いを生きのびるため軍事権力だけでなく政治権力まで手にしながら「ルーサンの改革」によって本来の「守護者」に立ち返ろうとした新シス戦争後のジェダイたちのように。
そんな彼らよりもさらに遠い昔、暗黒面に通ずる武器を手に暗黒面に至る感情を持て余しつつ戦い続けたJed’aiiたちのバランスはどこへと向かい、どこへと向かって行くのでしょうか。
「闇の子」たちの選択
一進一退の戦況を覆すべく無限帝国の支配者Skal’nas暗殺を目論むXeshですが、すべては後のパルパティーンを彷彿させる利己主義者Skal’nasによって練り上げられた、政敵排除とスパイ潜入を兼ねた陰謀であったことが明らかになります。
物語を通じて終始曖昧であったXesh遭難の真相を前に、自分は所詮ラカタたちのFoce hound(猟犬)に過ぎないことを痛感したXeshは築き始めたJe’daiiたちとの絆を諦め再び闇に囚われます。しかし彼と強く心を通じ合わせたShaeはあくまでもその奥底に眠る光への渇望を信じ、必死の呼びかけを行いながら刃を交わすのでした。スター・ウォーズという物語を通してくどいほど繰り返されるテーマである「選択」が、クライマックスに向けて本作でもまた繰り返されます。
後のアナキン・スカイウォーカーやベン・ソロは自ら闇を選びながらも再び光に復しましたが、では生まれながらに闇しか選ぶ余地のなかった者はそれでも救われうるのでしょうか。物語終幕ではラカタの奴隷として酷使され続けてきた怨念をたぎらせたフォース・ユーザーも多数登場し、「選べなかった者たち」の行く末を読み手に強く突きつけます。
「ジェダイ」への途
後にジェダイという末裔たちが存在することからも明らかなように、Je’daiiたちはこの戦いに勝利を治めます。しかし大きく闇に傾いた「バランス」をどのように立て直して行くのでしょうか。狂人から一躍英雄となったDaegen Lokは暗黒面に通じるForce saberを捨てた同胞たちとは道を違え、独自の道を歩むことを決意します。
そして己の闇に打ち克ったXeshと彼を愛するShaeはともにJed’aiiたちが瞑想に用いる砂漠へと足を踏み入れ、己の「バランス」を見出すべく心の旅へ出立するのでした。
This war has changed the Je’daii, (…) in ways I think none of us yet fully understand.
(この戦争はJe’daiiを変えたんだ、(略)どう変わったかはまだ誰も理解できていない。)
『Force was』#5より Daegen Lok
いくつかの在り方を選択したJed’aiiたちは、この後どのような道を辿ってジェダイへとなって行ったのでしょうか。残念ながら本シリーズは本作完結後の2015年、スター・ウォーズコミックに関するライセンスがダークホース社からマーベルコミックス社へと移ったために打ち切りとなり、その後の物語は言及レベルのものを除いては存在しません。
私たちが知る時代からもっとも隔たった物語の結末は、私たちが知り得ない彼方へと去ってしまいました。しかしこの物語の結末の舞台となるのは、私たちが初めてスター・ウォーズに接したときに眼前に広がったのと同じ一面の砂漠なのです。
物語の地平線は、間違いなく彼岸と此岸とを結んでいるのです。
参考資料
本作は未邦訳作品であるためKindle等、電子書籍でお求め頂くのが簡便かつ安価です。
本シリーズの根幹であるスター・ウォーズに触れるには全作品を網羅したDisney+での視聴がもっとも効率的です。
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