【映画】エピソード4『新たなる希望』〈異文化のふるさと〉※ネタバレあり

旧三部作
記事内に広告が含まれています。

※本記事は作品内容を吟味・考察を行うことを目的としているため、多くのネタバレ的内容を含んでいます。

むかしむかし、あるところに・・・〈スター・ウォーズのスタイル〉

SWといえば壮大なファンファーレ、画面を埋め尽くす「STAR WARS」のロゴ、これから始まる物語に関する事前情報を観客たちに示すオープニングロールが何よりの特徴です。そしてこのオープニングロールで事前情報を提示してしまうという「荒業」がSWをテンポの良い娯楽作品とする手助けをしています。

例えば「桃太郎」を映像化するとして、「桃から生まれた赤ん坊が桃太郎と名づけられ、おじいさんとおばあさんに育てられて鬼退治を決心し、キビ団子を片手に犬・猿・キジを仲間にして鬼ヶ島に乗り込んだ」というところはオープニングでサクッと説明しておいて、いきなり鬼ヶ島でのバトルシーンから映像化するようなものです。観客は最低限の事前知識だけを頭の片隅に、次から次へと迫りくる映像体験に身を任せてゆくこととなります。

このスタイルは「エピソード~」とナンバリングされた映画作品すべてに当てはまる特徴です。というわけで本作エピソード4(以下EP4)で提示される事前情報は以下の通り。

  • 舞台は邪悪な国軍と反乱軍との内乱時代であること。
  • 帝国は一撃で惑星を破壊できる〈デス・スター〉という恐るべき兵器を完成させ、反乱軍はその設計図を盗み出したこと
  • レイア姫なる人物がそれを持ち帰ろうとしていること

これらを基本情報として、私たちは未知の世界に放り込まれることになります。          SWが初見の方には説明のため、観たことのある方にもおさらいのためにざっくりと人物とあらすじをなぞってみましょう。

レイア・オーガナ〈若き指導者〉

本作のオープニングは実に印象的です。宇宙を航行する一隻の宇宙船、それを追いかける巨大宇宙船が画面いっぱいに覆いかぶさるように登場し、私たち観客の目をくぎ付けにします。追うのは銀河帝国の戦艦〈スター・デストロイヤー〉、追われるのは反乱軍の指導者レイア姫を乗せた宇宙船〈タンティヴⅣ〉(タナヴィーⅣ)です。船の戦力差は火を見るより明らか。抵抗むなしく鹵獲され、捕虜となってしまった反乱軍の一行の中にレイア姫の姿がありました。

まだ20歳にもならない若さながら父とともに反乱軍の指導者として活躍するレイアは〈デス・スター〉設計図を故郷である惑星オルデランに持ち出す途上に捕虜となってしまったのでした。しかし既に多くの戦いを通して抜け目なさを身に着けていた彼女は、設計図のデータを側近のドロイド(ロボット)に託し、密かに脱出を命じていたのでした。

C-3POとR2-D2〈私たちの分身〉

というわけで物語が始まってまず活躍するのは設計図を託されたドロイドということになります。託されたのはドラム缶のような外見のアストロメク(整備用)ドロイドのR2‐D2。R2には長年行動を共にする相棒がおり、それが人間のような外見を金ぴかのメッキで覆ったプロトコル(通訳)ドロイドのC-3POです。

片方はずんぐりむっくりのドラム缶でもう片方はノッポな痩せぎす、片方は冷静沈着で冒険を恐れない実務家、もう片方はとにかくおしゃべりで冒険嫌いで取り乱しやすい・・・。

二体はその外見から性格に至るまで真逆の存在であり、非常な人間味を持っているように描かれているため愛着を抱きやすく、実際この二体はSWを観たことがない人々も見たことはあるであろうマスコット的キャラクターとなり、ある意味SWの真の主人公とすら言えるかもしれません。

そしてこの二体、とくにC-3POこそがこの不可思議な物語世界に大した説明もなく放り込まれた私たちの分身として活動することになります。

突如巻き込まれた騒動から相棒の機転によって脱出できたものの目の前に広がるのは地平線まで続く無限の砂漠、しかも頼りの相棒は「秘密の任務」とやらに邁進して自分の言うことに聞く耳を持ちません。危険も物ともせずひたすら我が道を行く相棒にいい加減愛想をつかした3POはついにR2と別れ、少しでも安全なところに避難しようと砂漠をさまようことになります。

どうして自分ばかりこんな目に? R2はいったい何を考えているんだ? だいたいここはどこでどういう星なんだ? 自分はこの先どうなるんだ? 頭の中を疑問符で埋め尽くす3POの困惑はそのまま私たち観客の頭のなかと同じと言えます。

片や冒険にいそしみ、片や冒険に翻弄される二体のドロイドを更なる悲劇が襲います。ドロイドにとっては人さらいにも等しいジャワ族という廃品回収業者に捕まり、彼らが巣くう巨大な乗り物〈サンドクローラー〉に拉致されてしまうのです。思わぬ再会を喜ぶのも束の間、自分たちはどうなってしまうのか? 得体のしれない所に売り払われてしまうのか? まさかスクラップにするために壊されてしまうのか? 同じく囚われのドロイドたちとともに不安に苛まれる二体の前に、ついに物語の主人公が姿を現すことになるのです。

ルーク・スカイウォーカー〈非凡な世界の平凡な若者〉

それは颯爽と登場するヒーローなどではありません。ジャワ族によって売り飛ばされた二体を買い取ったラーズ家のしがない農夫として主人公ルーク・スカイウォーカーは登場します。

彼はなにやら出生に秘密を持っているらしいものの叔父夫婦によって平凡な農夫として育てられた平凡な青年です。田舎を飛び出して自分の人生を生きることに憧れながらも日々の営みに手いっぱいな家族の頼みを無下にすることもできず、不満を消化できないまま悶々とした毎日を送る青年。

「宇宙を舞台とする帝国と反乱軍の戦い」だの「恐るべき兵器〈デス・スター〉」だの「宇宙船を舞台とした光線銃での銃撃戦」だの「どこまでも続く不毛の惑星」だのという見慣れない世界に放り出された観客は、ここで初めて容易に理解できる、そして誰もが過去に、または現在進行形で身に覚えがあるであろう普通の若者を目にすることになります。

叔父オーウェンが買い取った二体のドロイドを整備している最中、R2が見せたレイアの映像に心惹かれたルークは次第に物語に関わって行くことになります。R2が探しているという「かつてレイアの父に仕えたケノービ将軍」なる人物にも心当たりがありました。

オビ=ワン・ケノービ〈フォースの語り手〉

それは不毛のタトゥイーンでもとりわけ危険な荒地とされる地域にたった一人で住んでいる老人ベン・ケノービでした。彼は周囲から、特に叔父からは「頭がおかしい」「近づくな」と散々な言われようの人物でしたが、なぜかルークにとっては不思議な親しみを感じる存在でした。完全に同名ではないものの「ケノービ」と名乗るからにはなにか関係があるのではないか? ルークの発言を聞いたR2はその夜ひそかにラーズ家を脱走してしまいます。

捜索に出たルークは思わぬ危険に遭遇しつつも渦中の人ベンと再会します。事情を知ったベンは自分こそがR2の探すオビ=ワン・ケノービであることを明かしルークに、そしてなにより私たち観客に対して事の次第を語り始めるのでした。

ここから極力「説明」というものを省くSWには珍しい「説明シーン」が挿入されることになります。なぜならこれから語られる事々はいずれもSWという物語を理解する上で絶対に省くことのできない要素だからなのです。

彼が語るのはルーク出生の秘密、かつて存在した「銀河共和国」「ジェダイの騎士」の存在、そしてなにより万物を結びつける不可思議な力「フォース」の存在です。これに対する理解抜きにSWを語ることはできません。

フォースとは古代ギリシャのエーテルをはじめとする様々な宗教概念を下敷きに練り上げられた概念です。あらゆる生命が発し、あらゆる場所に存在し、銀河を一つに結び付けているとされる「エネルギーの場」とされ、しかも単なる物質を超えて「意思」を持つ存在でもあるとされている、SWを象徴する宗教概念です。

銀河中にあまねく広がるフォースの存在を知覚できるのはごく限られた人々に限られるものの、彼らはフォースから無限の力を引き出すことができる。その強力な力を正義のために行使しようという志を持つ集団がジェダイの騎士と呼ばれた人々です。ジェダイの騎士は長い年月に渡って銀河を治めた銀河共和国の守護者として存在したものの、いまやその存在は見る影もありません。なぜならある男の裏切りがすべてを破壊してしまったからなのです。

ダース・ベイダー〈悪の代名詞〉

その男の名はダース・ベイダー。かつてジェダイの騎士としてオビ=ワンに師事していたにもかかわらず圧制者として台頭した銀河帝国に寝返り、かつての仲間たちを次々と殺戮していった邪悪な男です。彼はフォースの暗黒面と呼ばれるものに囚われ、その強力無比な力をひたすら破壊や支配にのみ使うことを志す、ジェダイの宿敵シスの暗黒卿となったのでした。

彼はかつてルークの父である偉大なジェダイの騎士アナキン・スカイウォーカーを殺害し、このあと更にR2たちを買い取ったラーズ家の人々を間接的にとはいえ殺害することになります。ルークにとっては実父・養父母の仇ということになり、まさにラスボス的な存在と言えるでしょう。ダース・ベイダーは本作以降長く「悪役」の代名詞となります。

しかし皮肉にもその冷酷な所業によって、偉大なジェダイの息子という出自を知らされ、その強い潜在能力を銀河のために役立てるよう説得されても決断を下せないでいたルークが冒険へと踏み出す決意の後押しをすることとなったのでした。帰るべき場所をなくしたルークはついに自らの運命に従い、終わりの知れない冒険へと踏み出すことになります。

ハン・ソロとチューバッカ〈SWのカウンターパワー〉 

「かつて父に仕えたケノービ将軍を探し出し、〈デス・スター〉設計図とともに故郷オルデランに送り届けろ」それがR2に託された秘密の任務でした。いまやケノービ将軍を伴った一行は急いで惑星オルデランに向かわねばなりませんが、そのためには宇宙船を購入またはチャーターする必要があります。しかも当地を支配する帝国軍の目を盗んで。

白羽の矢が立ったのは密輸貿易を営むアウトローであるハン・ソロ。ウーキー族という屈強な種族のチューバッカを相棒に、「銀河一早いガラクタ」と称される宇宙船〈ミレニアム・ファルコン〉を愛機として銀河中を股にかける超腕利きパイロットですが、同時に正義よりも大義よりもカネを重んじるという超現実主義者でもあります。

ベンが提示した高額の報酬に釣られて冒険をともにしたものの彼の態度は始終冷笑的。物語の中心となる反乱軍と帝国軍との戦いも銀河を統べるフォースの存在も鼻で笑い飛ばす彼の態度にルークは苛立つものの、それはどこか観客たちの本音と重なるものでもあります。実際彼の人気は根強く、その要因は名優ハリソン・フォード演じるキャラクターの魅力はもちろん、摩訶不思議な存在を肯定する物語世界に対するカウンターパワー(反対勢力)としての魅力もあるのではないかと思われます。

帝国の妨害をかいくぐって無事オルデランまでたどり着いた一行は驚くべき事実を突きつけられます。なんとオルデランが「ない」のす。それは恐るべき〈デス・スター〉がついに牙をむいた結果であり、ベイダーに勝るとも劣らぬ冷酷な男の仕業だったのでした。

グランドモフ・ターキン〈帝国の象徴〉

〈デス・スター〉建造責任者にして指揮官であるウィルハフ・ターキンは「グランドモフ」という帝国の上級指導層に属し、純粋なヒエラルキーではベイダーよりも上位に位置するスーパー・エリート。性格は残忍かつ冷酷無比で、ナチスをモデルとする銀河帝国の一員にふさわしい悪役の一人と言えます。

設計図の在りかを白状させるため、ベイダーとともに囚われのレイアを数々の尋問と拷問で苦しめるものの決して屈することのない姿に業を煮やしたターキンは、とうとう彼女の処刑を決意。さらなる苦痛を与えるために彼女の故郷をそこに住む数十億の人々ごと吹き飛ばしてしまったのでした。

ルークたちが到着したのはその悲劇の直後。反乱軍に関係する不審船として拿捕されてしまった一行はベンの機転によって逮捕を免れたものの〈デス・スター〉内部に缶詰めとなってしまいます。脱出を目指して〈デス・スター〉のシステムの一部をダウンさせるためルークたちを残して単身奥深くへと潜入するベン。しかしここにレイアが囚われていることを知ったルークは・・・

ということでこの〈デス・スター〉内部で巻き起こる冒険こそが本作の要点となるのです。

「これですべてが幕を閉じる」〈物語の終わりとはじまり〉

〈デス・スター〉で展開されるのは一つの因縁の終わりと新たなる物語の始まりです。無事〈デス・スター〉のシステムをダウンさせたオビ=ワンはかつての弟子にして今や許しがたい裏切者であるベイダーと再会することになります。それぞれの想いを胸に対決に臨む二人はジェダイだけが使いこなすことのできる武器ライトセーバーを起動し、最後の戦いを繰り広げます。

「これですべてが幕を閉じる」

ベイダーの言葉が示すように、この戦いは彼らにとって人生の大半をかけた因縁の清算と呼ぶべきものなのでした。

一方囚われのレイアの存在を知ったルークはオビ=ワンの指示を無視してその救出を決意。これまた多額の報酬に釣られたハンとチューバッカとともに〈デス・スター〉内部に繰り出し、みごと救出に成功したものの帝国軍の猛追を受けて窮地に陥ります。

ここにSWを代表する主人公たちが初めて一堂に会し、互いに反目し合いぶつかり合い、それでも協力し合いながら絆を深めて行く過程が見事に活写され、私たち観客にそれぞれのキャラクターを強く印象付けて行くのです。

反乱軍の勝利〈大団円と謎〉

数々の苦難を乗り越えた若き主人公たちは無事脱出に成功。しかし自らの役目を終えたオビ=ワンはルークの目の前で死を迎えることになりますが、それは不思議に充ちたものでした。ベイダーとの対決で優位に立っていたにも関わらずルークの存在を認めたオビ=ワンは謎の微笑みを残し、構えを解いて自ら刃にかかったのです。しかも死と同時に肉体は消失、驚愕と怒りに我を忘れたルークに逃げるよう語りかけたのです。

果たしてオビ=ワンは本当に死んだのか?                           そもそもなぜ勝負を捨てて自ら殺されるような真似をしたのか?

大きな謎を残したまま物語は進み、ついに設計図の解析によって〈デス・スター〉の弱点を発見した反乱軍は、銀河史上「ヤヴィンの戦い」と呼ばれることになる攻撃作戦を敢行するのでした。

義勇兵として参戦したルークの目の前で〈デス・スター〉からの凄まじい砲撃、そして恐るべきベイダーの猛攻によって次々と仲間たちが散って行きます。その中にはかつて共に過ごした旧友も混じっていました。さらに補佐役であるR2も機能停止に追い込まれ、もはや絶体絶命と思われた瞬間、再びオビ=ワンの声がルークの中に響きます。

「フォースを使え」

頼れるものをすべて失い極限状態に追い込まれたルークは、ついに父譲りの強いフォースに目覚めることとなります。

フォースに開眼したルーク、冒険を通じて大きく成長したハンの協力、そして多くの仲間たちの犠牲によって〈デス・スター〉は破壊されました。憎むべきターキンは〈デス・スター〉と運命を共にし、恐るべきベイダーは宇宙の果てへとはじき出され、戦いは反乱軍の目覚ましい勝利に終わります。

しかしベイダーは死んだわけではなく、帝国が滅びたわけでもありません。そしてなによりオビ=ワンの不可解な死をめぐる謎は何も解明されていません。物語は爽快な大団円と一抹の謎とともにいったん幕を閉じることとなるのでした。

原点にして頂点

本作の魅力はなんといってもいきなり未知の世界に放り込まれる「異文化体験」の面白さと、そんな「誰も知らない世界」で繰り広げられる「誰もが知っている古典物語」の妙でしょう。SWの世界には未知のテクノロジーが「普通に」存在するだけではなく、異形のエイリアンたちが「普通に」存在し、彼らが「普通に」交わって生活しています。そしてこれこそSWを通底するテーマの一つである「異なるものの共生」の象徴でもあるのです。

例えば本作の主人公格であるR2は電子音によるコミュニケーションしか取れず、ハン・ソロの相棒チューバッカも吠え声や唸り声の組み合わせでしかコミュニケーションがとれません。しかし物語世界の人々はそれで十分に意思の疎通がとれているのです。そしてそれを観ている観客のほうでも、大まかにではあれ彼らの言わんとすることが理解できるような気がしてきます。

それは彼らが決して未知の存在ではない、私たちと同じ感受性を抱く存在であることが明らかだからです。本作で展開するのは「巨大な悪に立ち向かう人々」「未知の冒険に踏み出す青年」「囚われの女性を救い出す騎士の活躍」「物語の最後に現れる強敵」といった古典的おとぎ話でおなじみの要素の数々。R2やチューバッカの言葉と同じく、はじめ意味の分からない異質なものとして戸惑っていた観客は、いつしかそれらどこかで見たことのある普遍性に気づき、いつしか愛着を抱いて行くことになり、これこそがSWが「現代の神話」と呼ばれる所以でありなのです。

だからこそそれらを「不朽の古典物語」ととるか「古臭いおとぎ話」ととるかによってその好き嫌いが大きく分かれて行くのです。例えるならば本作はブラックコーヒーのようなものです。コーヒーの飲み方は数あれど、結局基本となるのはこの「味」なのだというのと同じく、こののち多くの作品を生み出し大きな「味変」も施されることになるとはいえ、まずは基本となるのが本作の「味」なのです。

というわけで「ルーク・スカイウォーカーの旅立ち」をスカイウォーカー一族をめぐるファミリーヒストリー、「〈デス・スター〉をめぐる帝国と反乱軍の戦い」を銀河史をめぐるワールドヒストリーとして展開したEP4は、次作において衝撃の展開を迎えとともに物語を膨らませて行くこととなります。

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村 映画ブログへ
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

コメント

タイトルとURLをコピーしました