【映画】エピソード2『クローンの攻撃』〈闇に堕ちたジェダイたち〉※ネタバレあり

新三部作
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※本記事は作品内容を吟味・考察を行うことを目的としているため、多くのネタバレ的内容を含んでいます。

最低評価の最重要作品

『ファントムメナス』の10年後を描く本作品は、旧三部作でも言及された大戦争「クローン戦争」の勃発、のちにダース・ベイダーとなってしまう若きアナキン・スカイウォーカーの苦悩を描く超重要作品であるはずですが、悲しいことにシリーズ一、二を争うほど評価の低い作品となっています。その理由は主に、

  • ラブロマンスがあまりにも稚拙
  • アナキンの苦悩がまったく伝わらない

の二点に集約されるのではないでしょうか。とくに本作におけるロマンス描写の陳腐さときたら、違う意味で画面を正視しるのをためらわれるほどの羞恥心に襲われる出来栄えなのです。

他にも本作に対する批判は様々ですが、どれもこれもせんじ詰めれば「説明不足」がその根幹を成していると言えるかと思います。

もはや映画だけでは理解不能?

陳腐なラブロマンスや単なるワガママ坊主にしか見えないアナキンを除いても、本作の登場人物たちの言動には不可解な点が数多くあります。はっきり言って本作および次作『シスの復讐』は映画作品だけを観ても理解に苦しむ、というのが私の偽らざる本音です。

もちろん両作品とも「誰が、何を、どうしたか」に関しては余すことなく理解できます。しかし最も重要な「なぜ」という点が抜け落ちているのです。映像作品としての面白さを追求するあまり物語の文脈が犠牲にされてしまっているのが、映画作品最大の弱点なのです。

というわけで本作および次作を味わうためにはノベライズ作品を始めとする各種スピンオフ作品の手助けが不可欠です。というわけで今回もまた、オープニングに提供される事前知識を元に、異なる媒体作品の内容も援用しつつ、物語を解説して行きたいと思います。

  • 多くの星系が銀河共和国からの分離を望んでいること
  • 彼らは「分離主義勢力」と呼ばれ、ドゥークー伯爵という人物が率いていること
  • もはやジェダイによる治安維持が難しくなり、「共和国軍創設」が議論されていること
  • ナブーの元老院議員アミダラがそれに反対票を投じようとしていること

ほかのどの作品よりも政治色が強い本作ですが、その大本となるのは何といっても共和国からの分離独立を図る「分離主義勢力」正しくは「独立星系連合」の存在でしょう。

独立星系連合CIS〈独立戦争の機運〉

本作以降大きな存在感を持つ組織として登場する独立星系連合(Confederacy of Independent Systems)は頭文字をとってCISとも呼ばれ、腐敗した共和国を離れて新たな独立国家を築くことを目的として結成された連合体であり、本作の時点で既に数千もの恒星系が参加するほど大規模なものへと成長していました。

共和国およびジェダイ視点で描かれる本編では「分離主義勢力」や「分離主義者」と呼ばれ、一貫して「悪」というニュアンスで描かれますが、彼らを一概に「悪」とするのはあまりにも一面的な理解と言えるでしょう。

私は過去の記事で新三部作の世界観を『ガンダム』に例えましたが、本来正当な理由によって分離独立を図りながらも支配層が「悪役」であるために組織全体に悪役的イメージがついてしまっているという点では同作品のジオン公国と相似性があると言えるかもしれません。では独立星系連合を率いる「悪役」ドゥークー伯爵とは何者なのでしょうか?

彼はもともとヨーダに次ぐ重鎮として尊敬を集めるジェダイマスターでしたが、やがて硬直した評議会の在り方に反発して離反。同時代には同じように評議会に反発してジェダイを去ったマスターたちがおり、彼ら「失われし20人」の一人として惜しまれ続けていましたが、本作においてなんとジェダイおよび共和国の敵対者として再びその姿を現したのでした。

もとジェダイマスターの威光は多くの人々を惹きつけ、前作からの10年で独立星系連合の脅威は共和国との戦争すら視野に入れられるまでに急拡大し、結果共和国に軍隊創設論議を起こさせるまでになったのでした。ではそもそも”1000年続いた”共和国は、その1000年もの間なぜ正式な軍隊を持つことなく銀河を統治できていたのでしょうか?

共和国軍創設動議〈ジェダイの限界〉

共和国が長きに渡る歴史にもかかわらず軍隊を持つことなく存続し得たのは、一重にジェダイたちによる調停が功を奏していたからに他なりません。銀河中の尊敬を集め、思慮深く、いざとなれば力強い彼らジェダイの騎士の威光によって、銀河は守られていたのです。

しかし銀河を二分するほどの規模感を見せ始める今回の騒擾においては、ジェダイの圧倒的な数的劣勢は否めません。また政治的な動きや自らの力を防衛以外に使うことを厳しく自戒するジェダイたちは仮に戦争が起こったとしてもそれらに参加するつもりはないとまで断言しているのです。

ぜひともジェダイたちを「支援」するべく正式な軍隊の創設を・・・と叫ぶ元老院議員たちですが、その叫びにはもう一つの本音もあることがノベライズ版に描写されています。それはジェダイに対する不信感。折しも軍隊創設の是非を問う投票を間近に控えて緊張に包まれた首都を襲ったテロ事件が人々の本音を剥き出しにします。恐るべきテロの発生と高名な議員の死の報を耳にした元老院議場は大いに沸騰するのです。

「なぜジェダイは暗殺を阻止できなかったのだ?」

「ジェダイはもはやあてにならん! これは明白な事実だ」

「共和国には、もっと確実な保安手段が必要だ!」

ノベライズ版『クローンの攻撃』より引用

旧三部作時代には思いもよらない人々の言葉が私たちに衝撃を与えます。共和国末期において、もはやジェダイの騎士は尊敬の対象ではなくなりつつあろうとしていたのです。この「ジェダイへの不信感」は新三部作を貫くテーマであり、アナキンがなぜシスとしての道を選んだかにも繋がる重要テーマの始まりと言えるでしょう。

彼らの不信は決して根拠ないものとは言えず、ジェダイの長老ヨーダでさえ「暗黒面がすべてを覆っておる・・・」と不安を口にする始末です。ジェダイはフォースと深く繋がることでその本分を発揮しますが、それには心の平穏と均衡をなによりも必要とします。しかし昨今の銀河を覆う混乱が彼らの集中を妨げ、フォースとのクリアな繋がりが失われつつあり、彼らの弱体化が止まらない状態となっているようなのです。

もはや収拾不可能かと思われた元老院の激昂と狼狽ですが、件のテロによって死んだと思われていたナブー代表元老院議員パドメ・アミダラの登場と演説によって場は一先ずの落ち着きを得たのでした。

安全を求める人々〈独裁の足音〉

かつてナブー女王として危機に立ち向かったパドメは任期を終えて引退したのちも元老院議員として政治に参画し、故郷と銀河のための奉仕に奔走する毎日を送っていました。その生活様式はまさにキャリアウーマンそのもので、ノベライズ版では姉から私生活の充実を考えてはどうかと心配される描写があるほどです。

彼女をめぐるエピソードで興味深いのは、その善政を高く評価した人々によって彼女を終身の女王にしようという動きがあったというものです。本来ナブーの王位は憲法によって一定の任期が定められていますが、多くの人々が憲法を改正してまで彼女を女王に留めようとしたというのです。この動きはパドメ自身の強い反対によって見送られますが、この動乱の予感に充ちた時代において多くの人々が「不安定な自由」よりも「安定した支配」を強く望んでいことが窺えます。

そしてもう一人、まさにそのような事態が到来することを望む、否、目論んでいる者が登場します。本作の、というよりSWの影の主人公と呼ぶべきパルパティーンです。彼もまたその強いリーダーシップと優れた政治的手腕を評価され、既に任期が切れているにも関わらず最高議長の地位に留まり続けることを望まれ、パドメとは真逆にそれを受け容れているのです。

なぜならそれこそが彼の野望のグランドデザインに欠かせないものだからです。前作で合法的に最高権力者に昇りつめた彼の次なる目標は、合法的に非常時大権を獲得すること。そのために必要な「未曽有の国難」も、「脅威と戦う強いリーダー」としての名声も着実に手に入ろうとしつつありました。そして順風満帆なパルパティーンの視野には、もう一つの目標物があったのでした。

アナキンをめぐる「三角関係」

本作で大きくフィーチャーされるのはアナキンとパドメの「禁断の愛」とされていますが、本当にアナキン転落の真因はジェダイには禁じられた恋愛による執着だったのでしょうか?

暗殺未遂事件を受けて身辺警護を強く勧めたパルパティーンは渋るパドメに対して旧知のジェダイによる警護を提案。かつてともにナブー危機を切り抜けたオビ=ワンとその弟子アナキンが再び彼女と行動をともにすることとなり、10年前には姉と弟のようであった二人は若い男女として互いを意識するようになり、結果アナキンは強い愛と執着に囚われることとなるのですが、それよりもっと前から、もっと強く彼の心を捕えて離さないものがありました。それが故郷に置き去りにしてきた母シミへの思いなのでした。

映画作品では中盤以降に登場するシミの死を予見するヴィジョンですが、ノベライズ版では序盤から言及されており、長く彼の心を悩ませていたものであることがわかります。これはかつてEP5でルークが見たのと同じものであり、フォースを通じて垣間見る未来の光景でありながらそれが確定した未来なのか変更可能な未来なのかは誰にも分からないという厄介な代物です。

ジェダイとしての修行を積むアナキンが悩みを相談すべきは当然師匠であるオビ=ワン・・・であるべきですが、実際はそうではなくパルパティーンだったのでした。愛情や執着を厳禁し、少年の純粋な母への心配すら暗黒面へ至る危険因子と見るようなジェダイよりも、悩みを理解し傾聴してくれるパルパティーンの方により大きな信頼を寄せるアナキンというアナキン・オビ=ワン(ジェダイ)・パルパティーン(シス)との「三角関係」的図式が、特にノベライズ版では印象的に描かれています。

アナキンは物語中盤で母への思い抑えがたく、パドメとともにタトゥイーンへ帰還しその行方を追うのですが、既に奴隷から解放されてラーズ家の主クリーグと結婚して幸福な生活を送っていたシミは周囲に出没するタスケン・レイダーに拉致されてしまったことを知ります。必死の捜索も虚しく、惨たらしく傷つけられた挙げ句腕の中で息絶えた母の姿を見て激昂したアナキンはその場にいたタスケンたちを虐殺し、パドメにジェダイへの不満をぶちまけます。

「何もかもオビ=ワンのせいだ!」

ノベライズ版『クローンの攻撃』より引用

いささか唐突な感じのする言葉ですが、これはオビ=ワンが自分が提案したようにさっさとパドメ暗殺を目論む犯人逮捕に全力を尽くしていれば、もっと早くシミを救いに行けたという意味となります。そしてオビ=ワンへの不満はそのままジェダイへの不満ともなるでしょう。

ジェダイが肉親への執着を理解してくれていたなら、そもそもシミを不安定な奴隷の境遇に放置することはなかったはずなのに、とでもいうように。アナキンとジェダイとの溝はもはや決定的なように見えます。

まったくの臆見ながら私はアナキン転落の真因を、愛情による執着・妄執よりもジェダイとの人間関係にあると考えます。後の設定ながらじつはオビ=ワンにも、その師クワイ=ガンにも恋愛経験があることが発覚し、三者ともが他者への強い執着を抱いた経験があることが明らかになります。では同じような条件を持つ三者のうち、なぜアナキンだけが暗黒面へ足を踏み入れたのでしょうか?

それは「ジェダイへの帰属意識」と「ジェダイとの信頼感」の違いにあったのではないでしょうか? ともにジェダイとして純粋培養されたオビ=ワンとクワイ=ガンにとってジェダイ騎士団は唯一の「家」であったでしょうが、ジェダイ以外の人生を知っているアナキンにとってはその限りではありません。それを象徴するのが劇中の台詞「オビ=ワンのことは父とも兄とも思っている」という発言でしょう。両親や肉親といった関係性から切り離されたジェダイには本来存在しないはずの感覚であり、次作を観たあとにも強い感慨を呼び起こす台詞ですが、このような発言をするアナキンにとってジェダイ騎士団は決して唯一の居場所ではなかったのではないでしょうか?

そしてそのジェダイ騎士団はアナキンにとって抑圧の象徴のような組織でした。「実力を認めてもらえない」というのはジェダイという架空の概念を除いても若者すべてが抱く普遍的な不満ですが、より深刻なのは「人間としての悩みを打ち明けられない」という点でしょう。なぜなら彼らは前述のようにあらゆる人間的感情を暗黒面に至る道と信じ、否定する組織だからです。

ジェダイであるにもかかわらずジェダイを信じることができず、代わって信頼できる相手がシスであったこと。それがアナキンがシスとしての人生を歩むことになった最大の理由ではないでしょうか? そういう理由で、私にはアナキンが「暗黒面に堕ちた」という表現がしっくり来ないのです。なぜならアナキンよりもより大きな規模で「暗黒面に堕ちた」ジェダイが大勢いるからです。ともあれ一度本筋へと戻りましょう。

「刑事オビ=ワン」のミステリー

パドメの警護を担当することになったアナキンは、その後彼女の故郷ナブーへ赴き次第に距離を縮めて行くこととなりますが、その間オビ=ワンはパドメ襲撃の犯人探しを担当することとなります。彼らが警護についた後も謎の襲撃者は手を変え品を変え彼女の暗殺を謀り、その犯人逮捕がなによりの急務となったのでした。手がかりを追うオビ=ワンはしかし、たどり着いた謎の惑星カミーノで驚くべき事態と出会します。

なんと数百万人ものクローン人間による軍隊が製造されており、その発注者はかつて何者かに殺害されたサイフォ=ディアスというジェダイであるというのです。あまりの展開に混乱するオビ=ワンはそれでもヨーダらに事態を報告、急ぎ事情を知り、かつ一連の事件の重要参考人であろう賞金稼ぎのジャンゴ・フェットを捕えよという指示を受けるのでした。

ジャンゴは銀河屈指の賞金稼ぎの一人であり、莫大な報酬と引き換えに自らの遺伝子情報を提供することでクローン軍団を構成するクローントルーパーのオリジナルとなったのです。彼は報酬に加えて自身の「純粋な」クローンを発注し、ボバ・フェットと名付けて息子として育成しているのでした。ノベライズ版では短いながらも二人の父子の絆が垣間見えるシーンも挿入されており、今後のボバの動向に対する大きな説得力を担っています。

そして「純粋な」というのは、トルーパーたちはいち早い完成と有能な戦力となることを目的にその成長速度を二倍にされ、遺伝子操作によって自立心を大幅に抑制されているのですが、そのような操作を一切行わないということです。はっきり言って今後巻き起こるジェダイの滅亡や独裁政権の発足などどうでも良くなってしまうレベルの設定でありSW世界の人権意識はどうなっているのかという余計な思いを抱かせる設定と言えるでしょう。

ともあれジャンゴ拘束に向かったオビ=ワンはなんとフェット父子の連係プレーの前にあえなく敗北。辛うじて彼らの愛機〈スレーヴⅠ〉に発信機を取り付けてそのあとを追跡するのでした。『帝国の逆襲』を彷彿させる爽快なチェイスシーンを経て辿り着いたのは惑星ジオノーシス。そこで彼は今回の事件の背景すべてを知ることとなるのでした。

「パドメの首をよこせ」〈事件の黒幕〉

オビ=ワンの目の前に広がっていたのは戦争に備えているとしか思えない大規模なバトルドロイド工場の威容でした。驚愕するオビ=ワンはさらに独立星系連合重鎮たちの会合も目撃します。

盟主ドゥークー伯爵の呼びかけに応じ、銀河規模で各界を牛耳る組織の面々が顔をそろえていたのです。莫大な財力を誇るインターギャラクティック銀行グループ、優れた工業力を誇るテクノ・ユニオン、大規模なコングロマリッド企業同盟コーポレート・アライアンス、そして前作においてナブー危機を引き起こした通商連合トレード・フェデレーション。彼らの多くは大義名分ではなく莫大な利益に釣られて連合に協力し、とくに前作において辛酸をなめさせられた通商連合のヌート・ガンレイはパドメ殺害を条件としてドゥークーらへの協力を申し出ていたのでした。

すべてを知ったオビ=ワンは事の次第を評議会に報告しますが、不覚にもドロイドの奇襲を受けて捕虜となってしまいます。囚われのオビ=ワンに面会したドゥークーは孫弟子にあたる彼に驚くべき真実を打ち明けます。ジェダイ騎士団が忠誠を誓う元老院は、シスの暗黒卿の支配下にあるというのです。そして自分とともにシスを倒そうではないか、と。

オビ=ワンは驚愕しつつももちろん容易にそれを信じようとはせず、結果スパイとして処刑されることになってしまいます。上記の台詞は意外にも真実を語るものであり、かつてジェダイたちが経験したことのない土俵でシスとの戦いが展開しているということを表すものと言えるでしょう。実際次作においてジェダイたちはまんまとシスの思惑通りの暴走を繰り広げることとなるのです。

ノーリターン・ポイントへ・・・

憎むべき共和国のスパイとして処刑されんとしていたオビ=ワンを救出するためにジオノーシスへ駆けつけたアナキンとパドメですが、二人もまたドロイドたちの襲撃に遭って捕虜となってしまい、同じく協力を拒んだことで死刑判決を受けてしまいます。

三人が往年のコロッセオでの見世物のように闘技場に鎖で繋がれ、恐ろしいクリーチャーの餌食にされようとしたとき、ジェダイの重鎮の一人メイス・ウィンドゥ率いる200人ものジェダイが彼らを救出するために乱入したのでした。

ここにファンが待ち望んだ大規模なジェダイアクションが展開するのですが、同時に複雑な思いを抱かされる場面ともなってしまいます。シスの滅亡後1000年に渡って「正義」の側に安住してきた彼らは本格的な戦いを経験しておらず、バトルドロイドたちを相手に次々と倒れて行きます。いかにジェダイは戦いが本分ではないとはいえ、序盤から仄めかされてきた「ジェダイの弱体化」が白日の下に曝されるのです。

メイス・ウィンドゥが強敵ジャンゴを打倒したものの、圧倒的多数の敵に包囲されてまさに皆殺しにされんとしたその時、今度はなんとヨーダ率いるクローン軍団がドロイドたちを強襲、事態は一挙に変転します。ジェダイたちの指揮と優秀なクローントルーパーのコンビネーションによってドロイド軍団は大打撃を受けて潰滅し、ドゥークーもまたオビ=ワンとアナキンを決闘で降すもののヨーダとの戦いには敵わず敗走。戦いは「共和国軍」の大勝利に終わり、この戦いを以て銀河史上「クローン戦争」と呼ばれることとなる大戦争の幕が切って落とされることとなるのです。

しかし、ここに大きな疑問が残ります。そもそもジェダイは戦争が起きたとしても自分たちは参加しないと断言していたはずです。ところがあらゆる事情を知った元老院がパルパティーンに非常時大権を与え、正式に共和国軍が発足したと同時に最高指導者であるヨーダ自らがさっそく戦争参加に踏み切っているのです。これはどういうことでしょう?

彼らは元老院に仕える身であるため、元老院の決定には逆らえないという理由が考えられます。しかしノベライズ版に記述されたヨーダの台詞によって、ちがう理由が見えてきます。

取りうる道はふたつあった。が、多くのジェダイを取り戻せる道はこれしかなかった。

ノベライズ版『クローンの攻撃』より引用

でしょう。ふたつあった「取りうる道」とは戦争に参加するか、それともしないかでしょう。「取りえた」のであればジェダイとしての本分に忠実に戦争参加を拒むのが当然です。もしもそれが実現していれば、パルパティーンの野望そのものは防げなかったとしてもジェダイのこれ以上の弱体化を防ぎ、少なくとも自分たちの本分を守り切ることはできたのではないでしょうか?

しかし彼は多くのジェダイを取り戻す道、すなわち仲間の命を救うために自分たちの本分を枉げて戦争参加への道を選んだのです。これは彼らが戒めていたはずの「他者への執着」でなくて何なのでしょう?

彼らは自分たちの強力な力を私的感情に任せて誤用しないために、非人間的なまでに感情を抑制する戒律を定めていたはずです。にもかかわらずこれほどもあっさりと仲間への執着に駆られて本分を投げ出してしまったのでした。その結果はジオノーシスで犠牲となりえた200人どころではない多くのジェダイたちの死と消耗、そして「銀河の調停者」として積み上げてきた信頼と尊敬の瓦解だったのでした。

いま一度『帝国の逆襲』でヨーダがルークに言い放った言葉を思い起こしてみましょう。

「いま行けば友を救うことができるかもしれん。だが彼らがそのために戦ってきたものを失うだろう」

映画『帝国の逆襲』より引用

皮肉にも、この言葉はヨーダ自身の過去の過ちをなぞる言葉だったということはできないでしょうか?本作においてアナキンはシミとパドメへの「愛」によって大きく暗黒面へと傾きました。しかしヨーダが代表するジェダイ騎士団そのものが仲間への「愛」によって大きく暗黒面へと傾いてしまったのです。そして本作において傾いてしまったバランスは、もはや二度と戻ることはないのでした。

「万事予定通り進んでおる」

ノベライズ版『クローンの攻撃』より引用

すべてが終わり、すべての事実が明らかになった後、パルパティーンは弟子ダース・ティラナスことドゥークー伯爵に言います。パルパティーンは共和国における絶対権力を手に入れ、ジェダイ騎士団はその本分を失いました。さらにドゥークー伯爵の発言によって元老院への不信感を植えつけられた騎士団は以降議会への監視の目を強めることになり、「戦争参加」に次いで「政治干渉」の毒にまで冒されて行くこととなるのでした。

すべては「シスの復讐」に向かってゆっくりと、しかし着実に進んで行きます。

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