ライトセーバー博物誌
本書の魅力は言うまでもなく、SWを代表するガジェットであるライトセーバー58本が美麗極まりないイラストとともに一堂に会し、その所有者と合わせて紹介されているということです。もちろん映画本編は言うに及ばず、小説・コミック・アニメ・ドラマ・ゲーム作品と多岐に渡るスピンオフ作品に登場するセーバーとキャラクターたちが網羅されているのです。
特筆すべきは単なるファンブックや資料として片付けるには惜しいほどの美しい装丁。黒を基調とした高級感ある佇まいが実に印象的で、いっそ手袋を身につけて読まれることをお勧めします。指紋も付くし。まず冒頭を飾るのはSW世界におけるライトセーバーの役割と存在意義についての解説。
「もっと文化的だった時代の繊細な武器だ」
かつてオビ=ワンがルークに語った言葉に集約されるように、ライトセーバーはもはや芸術品を思わせるほどの美しさで私たちを魅了します。それを自在に操るジェダイたちにとってライトセーバーとは何なのか、それを所有する意味とは、それを自らの手で作る意義とは、そしてそれで戦う意義とはなんなのか? 読み手は様々な思いを馳せながらページを繰って行くことでしょう。
そして「本編」となる各キャラクターとライトセーバーの紹介ページへ。嬉しいのはその独特な装丁の理由でもあるところの、ほぼ実寸サイズでの掲載であることです。そのサイズ感と立体感ある美麗なイラストのおかげで、まるで実物を眼前にしながらその説明を読んでいるような錯覚にとらわれるほど。誰もが知る有名なキャラ、知る人ぞ知るマイナーなキャラ、不覚にも初めてその存在を知ったキャラ、多彩な登場人物たちの来歴に目を通すうちに、私たちSW愛好者は時間を忘れてしまうことでしょう。
ライトセーバー考〈書籍紹介にかこつけて〉
ライトセーバー。
それはジェダイを象徴する光り輝く剣であり、練達のジェダイが手にする光刃はまさに天下無敵の武器と言えますが、それは身を守るためにのみ用いられるのです。そう、決して攻撃に使われることはありません。彼らが深く調和するフォースと同じく。
・・・本当に?
まずはレジェンズ設定に触れてみましょう。不完全な面を多く残した古代のライトセーバーを今に見る洗練された武器に磨き上げたものはシスによる技術革新であったとされています。
そしてカノン設定ではライトセーバーの動力源は従来のアデガン・クリスタルからカイバ―・クリスタルへと改変され、加えて〈デス・スター〉のスーパーレーザー砲の動力もまた、巨大なカイバ―・クリスタルであると改変されました。
ジェダイを象徴する武器はシスによって完成されたレジェンズ。
ジェダイを象徴する武器と〈デス・スター〉の力の源が同じものとなったカノン。
両設定に共通するのは、ライトセーバーの二面性ではないでしょうか?
共和国末期。クローン大戦において光刃を手に猛烈な戦い振りを繰り広げるジェダイの雄姿は多くの者たちを魅了しましたが、その輝きに誰よりも眩惑されたのは外ならぬジェダイたち自身ではなかったでしょうか? シスのせせら笑いが聞こえるようです。
ジェダイは決してその力を攻撃に用いることはない?
攻撃と支配に用いるシスと違って?
ならば我らの遺したライトセーバーを振りかざしてお前たちが行っていることはなんなのだ? 「調停者」が「将軍」に成り下がり、「戦争のためだけに製造された命」を率い、「戦争と破壊」に加担しているお前たちの行いはなんなのだ? 所詮ジェダイも大いなる力を前にしては我々と同じ穴のムジナではないか。ジェダイがその光り輝く「武器」を使って行っていることが何よりの証拠ではないか。
シスの末裔ダース・シディアスはルークのライトセーバーを手に呟きました。
Ah,Yes. A Jedi’s weapon.
あの皮肉な口調の真意はなんだったのでしょう?
シスによって完成されたライトセーバー。恐るべき殺戮兵器〈デス・スター〉と同じ源を持つライトセーバー。もしかするとこの「光り輝くジェダイの象徴」こそ、ジェダイ壊滅を悲願としたシスたちの怨念の結晶であり、「シスの復讐」に至る最大の布石だったのではないでしょうか?
もはや力で倒せぬほど巨大な組織に成り上がったジェダイ評議会。執着を禁ずるはずの彼らがその「命」として「執着」するライトセーバーこそ、彼らの矛盾を剥き出しにし、その目を眩ませる復讐装置だったのではないでしょうか?
Ah,Yes. A Jedi’s weapon.
ジェダイ壊滅を見ることなく生を終えて行った祖先たちに思いを馳せ、その輝きとともに自滅していったジェダイに思いを馳せ、シディアスは万感の思いを込めてそう呟いたのかもしれません。この「光り輝く」刃は、本当にジェダイの命たるべきものなのでしょうか・・・?
I am a Jedi. like my father before me.
「新たなるジェダイ」となったルークの手に、ライトセーバーはありませんでした。
果たしてその存在は光なのか闇なのか? その本義は守護なのか破壊なのか?
果たしてその「光」は、ほんとうに「光」なのでしょうか?
あなたはどう思われますか?
参考資料
本記事でご紹介した『ライトセーバー大図鑑』は各種ECサイトにてご購入頂けます。
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