SWは数多くの作品群から成り立ち、根本となる映画作品だけを取り上げても全9作品にもなり、しかも公開順と時系列順が一致していないというややこしい構成の物語です。ここでは1977年にその幕を開けたSWの物語展開の歴史をおさらいしてみたいと思います。
「原典」の形成と拡張世界
SWは1977年に第一作にして物語全体では第4話となる「エピソード4 新たなる希望」(EP4)が公開され、以降数年おきに「エピソード5 帝国の逆襲」「エピソード6 ジェダイの帰還」(EP5、EP6)が公開され、1983年にいったん物語はその幕を下ろします。しかしその後も小説やコミック、ゲーム作品などを通じて物語は成長を続け、それらは「拡張世界」として多くのファンに愛されました。EP4に始まる以上三部作を「トリロジー三部作」や「旧三部作」と呼び習わします。
そして1999年、映像技術の進歩とともに創作意欲を刺激されたルーカスは再びSWを甦らせ、「エピソード1 ファントム・メナス」(EP1)の公開がファンたちを熱狂させました。以降SWは勧善懲悪の神話・おとぎ話的世界観から善悪不在の群像劇へと変化し、つづいて公開された「エピソード2 クローンの攻撃」「エピソード3 シスの復讐」(EP2、EP3)によって、多くの謎を孕んでいたSW物語は多くの補完の末にその全貌が明らかになったのでした。2005年に完結したこれらの三部作を「プリクエル三部作」や「新三部作」と呼び習わします。
SWは本来9部作で構成されるとされていたのですが、ジョージ・ルーカスは自らの年齢を理由にこれ以上のシリーズ製作を断念することを明言しました。ファンは大いに落胆したものの、それでも新三部作によって生み出された数々の新設定を織り込んで止まることのない各媒体での「拡張世界」の作品たちがSW世界の過去を語り、空白を埋め、未来を創りつづけて行ったのでした。
ディズニーによる新風
しかし2012年、ディズニーによるルーカスフィルム買収の報道がファンたちを驚かせます。それまでSWは創始者ジョージ・ルーカスが立ち上げた映画製作会社「ルーカスフィルム」がその全権を握っていたわけですが、それらの権利を引き継いだディズニーは新たなるシリーズの製作を発表。ファンたちは歓喜したものの、同時に大きな落胆をも味わうことになりました。
それは様々なメディアで展開した「拡張世界」凍結の通告。これまで多くのファンに愛されてきた物語の数々は「レジェンズ」と銘打たれた非公式作品となってこれ以上の展開を封じられ、代わってディズニー監修のもと展開する作品群こそが「カノン」と銘打たれた正史として君臨することとなったのです。確かに作品やキャラクターの版権諸々に厳しいディズニーのこと、「創作者公認の二次創作」というべき微妙な立ち位置であった「拡張世界」をリセットして自社が管轄する作品を展開していこうというスタイルは理解できるものでした。
しかし・・・
新たにつくり出された「エピソード7 フォースの覚醒」(EP7)に始まる三部作はファンたちの間に大きな賛否を呼び起こしました。そしてつづく「エピソード8 最後のジェダイ」「エピソード9 スカイウォーカーの夜明け」(EP8、EP9)には特に強い拒絶反応を示すファンが多く、これら「シークエル三部作」「続三部作」と呼び習わされているシリーズを黒歴史的扱いしている人々も少なくないようです。
極力これらの作品群を公平な目で観るならば、確かに優れた映像技術と改めてSWの基本的テーマをなぞる物語構成に見るべきものはあり、これまでSWに触れたことのない人々には格好の入門編として良いのかもしれないとは思いつつ、私も正直なところこれら「シークエル三部作」は余計者として愛着を感じることが難しいのです。
というわけで物語の内容的にもEP1~6の六部作+αだけで充分であると認識している私ですが、これら以外のディズニー製SWには魅力的なものが多くみられます。とくにEP3とEP4の間を描いた映画「ローグ・ワン」などは善悪不在となったSW世界観の一つの到達点ともいえる作品であると思いますし、実写ドラマシリーズ「マンダロリアン」はEP6後のSW世界を驚くべき展開とともに描いた傑作シリーズと呼べるものです。
いずれもすっかり大人向けとなったSW物語をしっかり大人向けの語り口調で展開してくれているところが魅力であり、それは紛れもなくSWが「子ども向け」を志向するルーカスから、対象に応じて巧みに語り口を変えるディズニーの手に渡ったことの功績が大であると思う次第です。
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