【未邦訳コミック紹介】『STAR WARS:HAN SOLO & CHEWBAKKA』#1~10(2022~2023)

カノンコミック
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※本文中に挿入される画像は『Star Wars: HAN SOLO & CHEWBACCA』(2022~2023)からの引用であり、作品のイメージや魅力をお伝えすることを目的に使用しております。(画像引用元:©STAR WARS,The Walt Disny Studios,Lucasfilm Ltd.All Right Reserved.)

【ハン・ソロ、父との遭遇?!】

今回ご紹介するのは2022年3月9日から翌年2023年3月1日にかけて刊行されたコミック・シリーズ『HAN SOLO & CHEWBACCA』です。スター・ウォーズにおいてもっとも有名なバディの名を冠する以上当然ながら、ハン&チューイーの強い絆と破天荒な物語を主軸とするバディ・アクション作品となっています。

その一方、本作は単なるハード・アクションに収まらない懐の深さを感じさせもします。なにせ本作は、彼の人物像に思いを馳せる上で欠かすことのできないある重要な出来事が物語られるのです。

それは「父との遭遇」。

一歩間違えば「孤高のならず者」というハンの身上を損ないかねない安直なサプライズとなりかねないこの衝撃的なストーリーは、どのような意義をもって読み手に語りかけてくるのでしょうか。

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【あらすじ】

舞台となるのは『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』と『エピソード4/新たなる希望』の間。故郷からの出立、相棒チューバッカとの出会い、そして愛憎渦巻く苦い冒険を潜り抜けたハン・ソロが、ジャバ・ザ・ハットのもとで名うてのならず者として銀河を股にかけていた頃の物語です。

物語のカギを握るのは一つの壺。それはなんとジャバの宿敵の遺灰が収められた骨壺であり、今ではとある富豪のものとなっているこの壺を持ち帰れば、100万クレジットもの報酬を支払うというのです。勇んで冒険へ繰り出そうとするハンでしたが、ある問題が立ち塞がります。

壺の存在をジャバに知らせ、その詳しい在り処を知るという”情報源”と行動を共にする必要があったのです。その情報源とは、なんとグリード。そして向かう先はハンの故郷コレリア。壺の持ち主はこれまたハンの愛機〈ミレニアム・ファルコン〉の原形YT-1300を製造したCEC(コレリアン・エンジニアリング社)のCEOの邸宅なのでした。なにやら過去の因縁にまみれた感のある旅路を歩むハンの前に、またしても”過去の幻影”と思える存在が現れます。それが彼の父であると主張する謎の老人オーヴァンでした。

もちろん純情とはほど遠いハンは、”感動の再会”に感極まるこの老人を詐欺師と即断しますが、それにしてはこの老人はあまりに多くのことを知っていました。まさかそんなはずはない…いやしかし…心千々に乱れるハンはしかし、警戒厳重な警備を破る機材や技術を持つ怪しげな”父”を伴って、値千金の価値を持つ”お宝”強奪計画を進めて行くのでした。

果たして計画の成否は?
ハンとグリードという究極の凸凹コンビの顛末は?
そしていくら憎い仇の遺灰とはいえ、そんなものに大枚叩こうというジャバの真意は?

そしてなにより”ハンの父”の真偽と正体、そして物語意義とは?

意外なコンビを組むこととなるハン&グリード
”ジュニア”と冒険を繰り広げるオーヴァンの真偽と正体は?

【見どころ:骨太なドラマと多彩なゲスト】

このように、シンプルかつ骨太な王道ピカレスクドラマが展開する本作に彩りを添えるのは多彩なキャラクターたち。誰もが知るお馴染みのキャラから、知る人ぞ知る人気キャラ、そして本作初出や、直近のコミック作品初出の見慣れないキャラに至るまで。まさに巨星から新星までという感じで、多くの個性ある登場人物たちが要所要所で絡んでくるのです。

ここでは少し些事に偏ることは承知で、日本ではなじみのない未邦訳作品にしか登場しないキャラクターの登場と役割について触れておきましょう。

まず、本作初出となるのはKHEL TANNNA。赤い肌とタトゥーが印象的な彼女はハンと同じくジャバのもとで悪事を重ね、こちらもハンと同じく〈ファルコン〉を彷彿させるYT-1300の改造船と思しき愛機を駆る女傑です。

そして本作で彼女と共に悪事を働くのは2019年に刊行された『AGE OF REBELLION』シリーズでハンと行動を共にしたのが初出となるAKKO。

2020年から2024年まで展開した『STAR WARS:BOUNTY HUNTERS』シリーズで波乱万丈な活躍を繰り広げたT’ONGA、

そして同作初出でジェダイ・マスター オポー・ランシセスと同じシスピアシアンに属すインパクト抜群な外見が特徴のOORIS BYNAR。

彼ら彼女らは、スター・ウォーズにおいてジェダイやシス、軍人や政治指導者たちと並んで高い人気を誇るならず者たちのなかで今後どのような活躍を暗躍を見せて行くか期待したいところです。

要所要所で活躍する新たなるならず者たち

また、本作初出かつ今後の活躍が期待されるならず者としてはPAEDRAの存在も忘れるわけには行きません。長寿と頭脳明晰で知られる絶滅危惧種Quaraxianに属す彼女は、とある苦境に陥ったチューバッカと、あるお馴染みキャラとともに際どい冒険を潜り抜けて行くこととなります。

そして彼ら彼女らとは真逆の立場にあって存在感を放つのはBUCK VANCTO。アメコミヒーロー然とした風貌の彼は、その見た目通りBenelex Marshal Serviceと呼ばれる法執行機関に属す「保安官」のような存在であり、理由を問わず賞金首となった人々を狩る賞金稼ぎとは異なり、曲りなりにも司法の側に身を置くことから「善玉」と呼ぶべき存在です。しかし逃げ惑う”獲物”を狩ることに対する喜びを隠さないその姿は、犯罪世界に生きるならず者たちに負けず劣らずの危険な香りを放ち、要所要所で物語のスパイスの役目を果たして行きます。

天真爛漫と奸智を併せ持つPHAEDRA
本作の”ダーティー・ハリー”を務めるBUCK VANCTO

また、物語クライマックスに登場するあるキャラクターは、往年のレジェンズ設定に想を発し、遠くハイ・リパブリック時代に端を発する長い歴史を感じさせる存在であり、また『ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー』で展開した冒険によってハンに根付いたある意外な一面を浮き彫りにするという面白い役割を演じてくれることとなり、ならず者たちと並んで今後の展開に期待したいところです。

【読み解き所感:永遠の子ハン・ソロ】

さて、ここからは本書読了後の私が感じた所感を綴るものなので、未読の方々には意味のつかめないところも多々あるかもしれませんが、内容のネタバレを含むものではないのでご一読いただければ幸いです。

まず、本書を一読して頭に浮かんだのは「父になれなかったハン」という言葉です。それゆえに『エピソード7/フォースの覚醒』において彼が殺されるのは必然であったのだと。

この物語で読者の注意をひくのは、やはり「ハンの父を名乗る男」の真偽であり、それに対するハンのリアクションでしょう。そしてそれを通して提示されるのは、ハンにとって「父とはなにか」という問いかけへの答えだったのではないでしょうか。

スター・ウォーズがジョゼフ・キャンベルの提唱した「英雄の旅路」を下敷きとしていることは有名です。古今東西の神話における「英雄」とは「独立した大人」または「一人前の社会の構成員」を意味し、互いに相似通った英雄譚は未熟な子どもが母の懐に代表される安全圏から旅立ち、種々の試練の果てに「父」つまり恐ろしくも偉大な存在との「対決」と「和解」を経ることで真の成長を遂げるというのが大まかな骨子です。

スター・ウォーズにおいてはオリジナル三部作におけるルーク・スカイウォーカーの人生がその典型とされています。彼は倒すべき敵ダース・ベイダーを討ち倒し、そのなかに眠る父アナキン・スカイウォーカーを救いへと導いたことで「対決」と「和解」を成し遂げ、真にジェダイとしての成長を遂げたのでした。

では、こういった文脈を踏まえて、本作を通して見えるハンにとっての「父」とはなんだったのでしょうか。彼にとって「父」とは常に「討ち果たすべき存在」であり、現状明らかになっている時点では、その人生において「父との和解」は存在しなかったのではないでしょうか。

父との対決を経験していない人間は軟弱かもしれませんが、父との対決”しか”経験していない人間もまた、独特の弱さを持ってはいないでしょうか。高温で焼入れを行った金属が高度を増すのと引き換えに靭性を欠き、それを避けるためには適温による”焼き戻し”を行うことで内部構造を安定させる必要があるように、人間にもまた「父との対決」のみならず「父との和解」をも経なければ、いつまでも弱さを裡に抱えたままになってしまうのではないでしょうか。

しかし、「対決」は置かれた環境に拠らず自らの意思で行うことができても、「和解」を行うにはある程度の環境と、それに伴う蓄積が必要とはいえないでしょうか。ルークとハンは、対称的なようでいて対照的な前半生を歩んできました。

ルークもハンも共に「父」を知らずに成長しました。

しかしルークにはあらゆる危険から彼を全力で守り、適切な教育やしつけを行う配慮を欠かさない「まともな保護者」が存在しました。辺境の水分農夫という単調な生活に対する満ち足りなさを持て余したルークですが、それでも育ての親たるラーズ夫妻や、不思議な老人ベン・ケノービに対する感情はごく穏やかなものだったことでしょう。そして身近な人間たちに対する穏健な心持こそ、他者全体に対する穏健性、つまり「他者性の尊重」の苗床ではないでしょうか。

銀河に飛び出したルークは、いかなる時も他者に対する慮りを忘れず、それゆえに敬愛するオビ=ワンや偉大な師ヨーダの見立てに背いてでも、倒すべき宿敵ベイダーの中に父アナキンの面影を感じ得ました。これによってルークは「ジェダイとしてシス卿ダース・ベイダーを倒す」のではなく、「ジェダイとして、なおかつ息子として、シス卿ダース・ベイダーを倒し、なおかつ父アナキン・スカイウォーカーを救いへ導く」という「父との対決と和解」を同時に果た得たのではないでしょうか。

一方のハンはどうでしょう。

あらゆる危険から彼を全力で守るのはいつも彼自身であり、その周囲に「まともな保護者」の存在は見当たりません。

 I take orders from just one person– me.
(この俺に命令できるのは俺しかいねぇんだ)

『エピソード4/新たなる希望』劇中台詞

ハン・ソロというキャラクターを語るうえでこれ以上ないほど彼の性向を物語るこの名台詞は、彼の独立心あふれた雄姿を映し出すと同時に頑なさをも映し出しています。彼が対決を宿命づけられた「父」とは、周囲の過酷な環境そのものであり、また映画『ハン・ソロ』で師父の役割を果たしたトバイアス・ベケットでしょう。ハンはそのいずれに対しても対決し、乗り越えることで成長を遂げてきました。彼はその独立不羈の性向で無謀な冒険も苛酷な戦いをも潜り抜け、自らの良心に従うことでならず者から一転、英雄への道を駆けのぼったのでした。

しかし飛躍を承知で言えば「父との和解」を経験していないハンには、自分自身が「父」となる下地ができなかったのではないでしょうか。よって自らの「子」の前に「父」として立った時、打ち倒されることは避けられない運命だったのではないでしょうか。

ハン・ソロは常に「強き子」でした。自立し、誰にも従わず、父を打ち倒して前へ進む存在でした。その性向はオリジナル三部作において彼を英雄の座へと押しあげました。しかし同じ性向が、今度は彼を「父になれない男」にしてしまったのではないでしょうか。

ハン・ソロをハン・ソロたらしめている強さと、弱さ。

本作は手に汗握るスリリングなピカレスク・ドラマであると同時に、そのような点にも思いを馳せさる硬軟相合わさった作品であると考えます。

常に「父」を打ち倒し続けたハン
彼がついに「子」によって打ち倒されるのは宿命だったのかもしれない。

以上の所感は未読の方には意味の掴みにくい朦朧とした文章となってしまったと思われますが、ぜひお読みの際の参考に、そして既読の方にはその所感のご参考になれば幸いです。

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